研究課題/領域番号 |
17J03048
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 泰典 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | Pradimicin / N結合型糖鎖 / 抗HIV / 糖鎖認識 / 相互作用解析 |
研究実績の概要 |
① Pradimicin A (PRM-A) が高い親和性を示すN結合型糖鎖部分構造の特定 昨年度の研究により、PRM-Aは非還元末端マンノース (Man) 残基を1つもつ直鎖型よりも複数もつ分岐型のオリゴ糖に強く結合し、特に非還元末端Man残基を3つもつ三分岐型にもっとも強く結合することが明らかになった。今年度は高マンノース型糖鎖から三分岐型のマンノオリゴ糖モチーフを合成して、PRM-Aの抗真菌作用に対する阻害試験および昨年新たに開発したPRM-FA1を用いた凝集試験の二種類の結合試験によって結合活性を比較した。その結果、両試験において同様の結果が得られ、PRM-Aはオリゴ糖に対してオリゴ糖の構造に関わらずほぼ同等の結合活性を示した。昨年度と今年度の結果をまとめると、PRM-Aの結合活性はオリゴ糖の構造に関わらずオリゴ糖のもつ非還元末端の数に依存して上昇することが明らかとなった。本結果から、PRM-AはN結合型糖鎖の中でも非還元末端Man残基を2つ有するハイブリッド型糖鎖よりも3つ有する高マンノース型糖鎖を選択的に認識している可能性が示唆された。今後はハイブリッド型糖鎖とハイマンノース型糖鎖の全長構造を用いてこの可能性を検証していく予定である。 ② PRM-Aとオリゴ糖の結合様式の固体NMR解析 昨年度は、18位カルボキシ基、11-OMeおよび4’-NHMeの各炭素原子に選択的に13Cを導入したPRM-Aと二つの非還元末端Man残基を別々に13C標識した10との複合体をそれぞれ調製し、DARR (Dipolar Assisted Rotational Resonance : 6オングストローム以内の距離にある13C間の双極子相互作用をクロスピークとして検出する二次元固体NMR法) によって測定を行ったが、明確な結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度に引き続きN結合型糖鎖の部分構造に対応するオリゴ糖の合成を進め予定していたオリゴ糖23種の合成を完了した。これらのオリゴ糖を用いてPradimicin(PRM)が非還元末端マンノース残基の多いオリゴ糖に強く結合することを明確にし、一年目の研究目標であった「 PRMが高い親和性を示すN結合型糖鎖部分構造の特定」をほぼ達成した。一方で二年目の研究目標である「PRMとオリゴ糖の結合様式の解析」に関してはPRM/オリゴ糖複合体の固体サンプルを調製し固体NMRによる測定を試みているものの十分な進展が見られなかった。 これらの状況を加味すると、研究は進展しているものの順調に進展しているとは言えず、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、PRM/オリゴ糖複合体サンプルを調製し、DARR (Dipolar Assisted Rotational Resonance : 6オングストローム以内の距離にある13C間の双極子相互作用をクロスピークとして検出する二次元固体NMR法) によって測定を行っている。しかしながら、本法ではNMRシグナルがブロードしてしまい明確な結果を得ることはできなかった。本年度は、複合体サンプル調整時のpHなどの調製条件を変更し測定を試みたがシグナルの改善ができなかった。そこで今後は引き続きサンプル調製の条件を検討するとともに他の固体NMR手法も用いてオリゴ糖との複合体構造の解析を試みる予定である。
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