研究実績の概要 |
(1) 粘性差を伴った2成分混合系における熱対流 これまでに高分子溶液や粘性の強い温度依存性を持った単純流体において,対流中に動的に流れがなくなる領域(Transient Stagnant Domain:TSD)が形成されることを発見した.この形成起源について,混合する2成分間の運動性の違いに着目した.そこで粘性が異なるシリコンオイル混合系および水・グリセロール系を用いて粘性差が伴った熱対流現象を詳細に調べた.その結果,ある粘性差以上になるとTSD形成が起こることを発見した。さらに2成分系対流においては,温度勾配を駆動力とする成分の拡散が生じて濃度勾配が形成されるLudwig-Soret効果が対流に影響することが知られている.そこで,これまでに報告されているSoret係数を参考にLudwig-Soret効果について考察を行い,TSD形成とは関係していないことを突き止めた.
(2) 物理ゲルを用いた新たな流体力学的不安定性の実験手法開発 重力に対して密度反転で接している場合,界面は揺らぎによる凹凸が次第に増大して流れが生じる.このような現象は界面不安定性の典型例であるが,実験的に初期界面をどのような手法で作り出すかは不安定化後の流れに与える影響を考える上でとても重要である.例えば流体間に仕切り板を取り付け,それを引き抜く方法はよく用いられるが,この引き抜きによる人為的な初期撹乱がその後の不安定化による流れの成長を支配することが知られている.そこで物理ゲルを用いることで,人為的な初期撹乱を伴わない新たな実験手法を開発し,Rayleigh-Taylor不安定性およびlock exchange実験に本手法を適用し,興味深い実験結果を得ることに成功した.
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