(粘性差を伴った2成分混合系における熱対流現象) 前年度は混合する2成分間の運動性の違いに着目し、粘性が異なるシリコンオイル混合系や水・グリセロール系をを用いて対流現象を調べた。その結果、ある粘性差以上になると過渡的停滞領域(TSD)が形成され、そこにLudwig-Soret効果は関係ないことを突き止めた。本年度はさらにTSD形成の起源を明らかにするため、混合する2成分間の粘性の濃度依存性について詳細に調べた。その結果、同じ2成分混合系であっても粘性の濃度依存性の強さによってTSD形成は起こらないことを突き止めた。 (物理ゲルを用いた流体力学的不安定性の実験手法開発) レイリーテイラー不安定性に代表される流体力学的不安定性現象は界面不安定性の典型例であるが、実験的にどのようにして安定した初期界面を作り出すかは不安定化後の流れに与える影響を考える上でとても重要であるが、これまでの研究の多くは流体間に仕切り板を取り付け、それを引き抜く方法、容器を回転させる方法などがとられてきた。しかしながら、これらの手法では人為的な初期撹乱がその後の不安定化による流れの成長を支配することが知られていた。そこ物理ゲルを用いることによって、これまでの手法ではやむを得ないとされてきた人為的な初期撹乱を伴わない混和性液体における不安定化現象の初期過程を調べることが可能な新たな実験手法を開発した。そして典型的な流体力学的不安定性であるRayleigh-Taylor不安定性やlock exchange実験に本手法を適用し、初期からの不安定化を調べることができることを示した。
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