研究実績の概要 |
200℃程度の高温においても高い発光量を維持することができるシンチレータ単結晶の開発を目的に、ワイドバンドギャップを有する新規パイロシリケート型シンチレータ単結晶(RE2Si2O7, RE:希土類元素)の探索を行った。採用第一年度は、申請者の所属する研究室で開発したCe賦活(Gd, La)2Si2O7(Ce:La-GPS)シンチレータ単結晶の希土類サイトのGd3+をY3+で置換したCe賦活(Gd, La, Y)2Si2O7シンチレータ単結晶についてマイクロ引下げ法を用いて研究を行い、Y3+を5%置換することによって発光量の高温耐性が改善されることを明らかにした。発光量の高温耐性測定時には、200℃まで使用可能な光電子増倍管と恒温槽を組み合わせ、評価装置の立ち上げを行った。 さらに、分子科学研究所極端紫外光研究施設でのバンドギャップエネルギー測定、山形大学での光刺激ルミネッセンス測定を行い、Ce:La-GPSシンチレータ結晶のエネルギーバンド図を作成した。また、チェコ科学アカデミー物理研究所において熱ルミネッセンス測定を行い、二価および四価陽イオン共添加やY3+置換による電子トラップ準位について評価を行った。加えて、単結晶構造解析についても取り組み、各サイトに入る原子の特定および原子座標の特定をした。 以上の成果について、国内学会で発表および結晶成長および光学特性に関する国際学会で積極的に発表し、学術誌に1本の英語論文が受理済みである。 申請者は、研究室内外および国内外で多様な測定を行うことで、新規パイロシリケート型シンチレータ単結晶に関する大変有意義な成果を得ており、期待以上の研究の進展があったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高温下で高い発光量を有する新規パイロシリケート型シンチレータ結晶の開発に向けて、二価または四価陽イオン(Mg2+, Ca2+, Sr2+, Ba2+またはZr4+)共添加Ce賦活(Gd, La)2Si2O7(Ce:La-GPS)およびCe:La-GPSの希土類サイトにY3+を置換したCe賦活(Gd, La, Y)2Si2O7シンチレータ単結晶について研究を行った。 ガンマ線源として137Csを用いて励起を行った25℃での発光量測定の結果から、二価および四価陽イオン共添加によって室温での発光量は劣化することが分かった。また、175℃での発光量については、Ba2+共添加Ce:La-GPSで共添加前と比較して改善することが明らかとなった。Y置換Ce:La-GPSでは、Y5%置換Ce:La-GPSで25℃および175℃の発光量が最大となった。 分子科学研究所極端紫外光研究施設(UVSOR)において測定したY置換Ce:La-GPSのバンドギャップエネルギーは、Y置換量に関わらず一定(約7.14 eV)であった。一方で、山形大学で評価した光刺激ルミネッセンス測定の結果から、Y置換前とY5%置換サンプルを比較すると、Ce3+の4f準位と伝導帯の下端部間のエネルギーは大きくなることがわかった。Y置換前後で励起・発光スペクトルが変化しなかったため、Y5%置換によってCe3+の5d-4f準位の重心位置が価電子帯側に変化したと考えられる。さらに、チェコ科学アカデミー物理研究所で測定したY置換Ce:La-GPSの熱ルミネッセンス測定の結果から、Y置換量による電子トラップ準位の変化はないことが明らかになった。
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