2018年度は,北米圏で実施された研究を日本人を対象に行った。飲酒効果期待への気分の影響を検証するため,日本人問題飲酒者(N=500)に音楽を用いた気分の誘導(ポジティブ気分またはネガティブ気分)を行い,飲酒効果期待の違いを検証した。ネガティブ気分に誘導された問題飲酒者は,「飲酒は身体的不調および落ち込みに繋がる」飲酒効果期待を高めることが示唆された。またネガティブ気分制御期待は,気分操作の「精神的落ち込み」飲酒効果期待への影響を調節した。ネガティブ気分を回復できるとより強く信じている人は,「飲酒は落ち込みに繋がる」信念へのネガティブ気分操作の影響が低減されることが示唆された。この研究成果は『International Journal of Mental Health and Addiction』に掲載された。また,カリフォルニア州立大学の臨床心理学の研究室と共同で,親の養育態度と子どものネガティブ気分制御期待の関係を日米で比較した。日本人若年者(n=200)とアメリカ人若年者(n=150)をインターネットでのアンケート形式で横断調査を行った(現時点で分析中)。ネガティブ気分回復の発達的検討に関しては,65歳以上の日本人飲酒者を対象に,飲酒量,ネガティブ気分制御期待,孤独感の横断的調査を行った(現時点で分析中)。
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