研究課題
本研究は、地磁気搭載慣性センサ、インソール型足圧センサ、レーザーレンジセンサ等の計測機器を用いて、変形性膝関節症(膝OA)患者の移動能力評価を行い、膝OA進行および関節痛の予後予測が可能な動的診断システムを開発し、そのシステムに準じたリハビリテーション介入が、膝OA進行および関節痛に与える影響を検証することを目的としている。本研究は、研究趣旨を対象者に書面にて個別で説明し、同意を得た後に実施した。平成30年度では、変形性膝関節症(Kellgren/Lawrence grade 1以上)と診断された地域在住高齢者163名(平均年齢68.5歳、BMI22.8 kg/m2、女性比70.6%)を対象に、上述の計測機器を用いて移動能力評価(TUGテスト)を行った。TUG テストは、椅子から立ち上がり、3m先にあるコーンを回り、また椅子に座るまでの時間を計測するものである。対象者は、地磁気搭載慣性センサを第3腰椎レベルにベルクロを用いて装着し、また、インソール型足圧センサ内蔵の標準靴を履いた後、TUG テストを計2回行った。TUG テスト中は、椅子の下に置いたレーザーレンジセンサから照射される赤外線を使用し、対象者の脚追跡を行った。慣性センサとインソール型足圧センサによる計測結果は、現在、解析結果をまとめている段階であるため、今回は、レーザーレンジセンサによって得られたTUGテスト中の計測値と関節痛(JKOM pain score)との関連性を重回帰分析を用いて検討した。その結果、年齢、性別、BMI、X線上の関節症重症度の共変量で補正してもなお、関節痛が強い対象者ほど、立ち上がりから1歩目を踏み出すまでの所要時間が遅延していることが明らかになった。以上の結果は、関節痛を伴った膝OA患者の移動制限に関する新たな知見となり、新しい治療戦略開発に寄与しうる。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画通り、初年度には、予備実験の後、変形性膝関節症163名の地域在住高齢者を対象とした計測と、一部解析を完了している。得られた研究成果は国内外の学術会議にて発表予定であり、原著論文も現在執筆中である。これらの研究成果については、当初の予定よりも早いペースで発表しており、当初の計画以上に進展している。
今年度の研究成果は、レーザーレンジセンサから得られた計測値をもとにまとめたものである。今後は、慣性センサとインソール型足圧センサによる計測結果をまとめ、次年度の学会発表や論文執筆にとりかかる予定である。
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npj Regenerative Medicine
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PLoS One
Gait Posture
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine