研究課題
本研究は、地磁気搭載慣性センサ、インソール型足圧センサ、レーザーレンジセンサ等の計測機器を用いて、変形性膝関節症(膝OA)患者の移動能力評価を行い、膝OA進行および関節痛の予後予測が可能な動的診断システムを開発し、そのシステムに準じたリハビリテーション介入が、膝OA進行および関節痛に与える影響を検証することを目的としている。なお、本研究では、全ての対象者に研究趣旨を書面にて個別で説明し、同意を得た後に実施した。平成31年度では、膝OAと診断された地域在住高齢者131名を対象に、腰部に固定した慣性センサを用いて歩行評価を行った。得られた計測値から、左右非対称性指標であるHarmonic ratioとImproved harmonic ratio(iHR)の2つの指標を算出した。これら2つの指標が膝OA患者の下肢筋力や日常生活困難度のモニタリング指標となりうるかを検討するため、線形回帰分析を用いてこれらの関連性を評価した。その結果、内外側方向のiHRが膝OA患者の関節痛や生活支障度と関連した。次に、これら横断的研究から構築した歩行評価システムを膝OA患者の個別リハビリテーションに生かすため、医療機関において外来リハビリテーション中の膝OA患者1名を対象とした症例検討を行った。本症例は歩行中の左右非対称性に起因する関節痛を慢性的に有していた。前述のiHRを用いて複数のリハビリテーション治療介入前後の変化を捉えることで、どのリハビリテーション治療が最も左右非対称性を改善し、関節痛緩和において最適な治療なのかを定量的に判断することができた。6週間のフォローアップ時では、良好な治療経過をたどっていた。以上のことから、IMUによる歩行評価は、膝OA進行に伴う関節痛や生活支障度の増悪をモニタリングできる可能性があり、リハビリテーション治療方針決定にも寄与することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度には、変形性膝関節症患者131名を対象に、慣性センサを用いた計測を行い、一部の解析を既に完了している。また、平成31年度に向けたリハビリテーション介入効果に関する予備検討も行うことができた。得られた一部の研究成果については、予定通り国内外の学会や原著論文にて報告することができ、おおむね順調に進展していると言える。
平成30年度に得られた計測データについては解析を継続し、学会発表ならびに論文成果発表を行っていく。また、平成30年度のリハビリテーション介入予備検討を踏まえて、計測システムを用いた系統的な膝OA治療戦略を構築する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 9件)
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