研究課題/領域番号 |
17J03179
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
茂木 将孝 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 分子線エピタキシ― / 量子異常ホール効果 / 磁気抵抗効果 / ヘテロ接合 |
研究実績の概要 |
トポロジカル絶縁体と磁性トポロジカル絶縁体、強磁性絶縁体とのヘテロ接合において、新奇な電気磁気応答開拓のための基盤物質作製および新機能実証を行った。以下に主な成果を示す。 [1.強磁性絶縁体薄膜の作製] 高品質なトポロジカル絶縁体へ強磁性誘起すると、その試料端に非散逸電流が流れる量子異常ホール効果を発現する。磁性不純物添加に依らないトポロジカルでない強磁性絶縁体との接合では、トポロジカル絶縁体の更なる高品質化により量子異常ホール効果が安定的に発現することが期待される。そこで実際に、分子線エピタキシー法によって強磁性絶縁体薄膜を作製した。X線回折、断面TEM等による評価からトポロジカル絶縁体との積層が可能であることを確かめた。 [2.磁性/非磁性/磁性トポロジカル絶縁体三層構造における巨大磁気抵抗効果の観測] トポロジカル絶縁体では、電気磁気効果という電場の印加による磁化を生じる現象の発現が理論研究で予想されている。トポロジカル絶縁体を磁性/非磁性/磁性の三層構造にし、磁化方向を反平行すること(アクシオン絶縁体状態)が必要である。そのような三層構造を開発し、走査型SQUID顕微鏡でミクロな磁気的特性を明らかにした。磁性層へ添加する磁性元素に、保磁力が大きく異なるものを用いることで、磁化方向の反平行状態を安定にした。これによって量子異常ホール効果/アクシオン絶縁体状態を外部磁場で容易に制御可能になるとともに、電気抵抗値が10万倍変化する巨大磁気抵抗効果を観測した。 [3.上記三層構造における量子化磁壁伝導の観測] 上記三層構造では、通常の磁性一層構造とは異なり、3He冷媒温度で安定的に量子異常ホール効果を発現できる。3He冷凍機搭載磁気力顕微鏡によって量子異常ホール状態での磁区書き込みを行い、磁壁を自由に生成できるようにした。同時に電気輸送測定することで、量子化磁壁伝導の実証をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、トポロジカル絶縁体と積層可な強磁性絶縁体を開発し、機能性実証に向けた物質基盤を確立した。作製した積層構造において、新規性のある実験データも予備的であるがすでに出てきている。加えて、本研究課題開始以前より進めていた磁性/非磁性/磁性三層構造において、更なる改良を施すことで巨大磁気抵抗効果や量子化磁壁伝導という基礎学理のみならず応用面でも重要な効果を観測できたためである。強磁性絶縁体開発について1本論文執筆中で、磁性/非磁性/磁性三層構造での成果については3本の論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
強磁性絶縁体/トポロジカル絶縁体ヘテロ接合の高品質化とともに、観測される電気輸送現象の解明を行う予定である。また、それらを超格子化することで、電気磁気応答の巨大化や、その他機能性発現も可能かどうかについて検討する。一方で、磁性/非磁性/磁性トポロジカル絶縁体三層構造についても、理想的な電気輸送特性を確立できたので、3He温度以下で動作可能な新しい測定系の検討、立ち上げを行い、電気磁気効果の実証を目指す。
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