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2017 年度 実績報告書

ニワトリのうま味受容機構の解明:畜産学と比較生理学への貢献

研究課題

研究課題/領域番号 17J03180
研究機関九州大学

研究代表者

吉田 悠太  九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワード味覚 / ニワトリ / うま味
研究実績の概要

うま味は基本五味の一つであり、食物中のアミノ酸や核酸を検出する役割を持つ。畜産動物であるニワトリのうま味受容機構を解明することは、新規飼料材料の創出や飼料効率の改善に貢献できる。さらに、鳥類であるニワトリのうま味受容機構を解明することは、動物の味覚受容機構の進化に関する知見を提供する。しかしながら、鳥類のうま味に対する感受性、並びにうま味受容機構についてはほとんど解明されていない。
本年度は、主にニワトリ生体を用いた行動試験、並びにニワトリ口腔組織におけるうま味受容体の発現解析を行った。まず、ニワトリの味覚応答を検出するため、ニワトリの1分毎の飲水量を自動で計測する装置を開発し、ニワトリが、ヒトの苦味受容体に作用する物質には応答しないが、ニワトリの苦味受容体に作用する物質に応答し、飲水量が減少することを見出した。すなわち、本装置を用いてニワトリの味覚受容体に作用して生じる味覚応答を検出できることが示された。さらに、本装置を用いて、昆布だしの成分であるグルタミン酸ナトリウムおよび鰹だしの成分であるイノシン酸ナトリウムの混合溶液に対して、ニワトリが味覚応答を示すことを明らかにした。さらに、うま味溶液を摂取させたニワトリに対して、内臓不快感を誘起する塩化リチウムを腹腔内投与すると、以後本来好ましいうま味溶液を忌避するようになった。これは味覚嫌悪学習と呼ばれる応答であり、ニワトリがうま味を味覚として感じていることをより強く示唆した。さらに、ニワトリの口腔組織におけるうま味受容体の発現を確認するため、味蕾を多く含む口蓋と、味蕾をほとんど含まない舌尖における受容体の発現量を解析した。その結果、哺乳類におけるうま味受容体遺伝子候補のうちいくつかが、口蓋において有意に高い発現を示した。従って、これらの受容体がニワトリにおいてもうま味受容体として機能している可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに、ニワトリ生体を用いた行動解析により、ニワトリがうま味溶液に対して短時間で応答できること、並びにうま味を味覚として感知、および学習できることを明らかにした。さらに、ニワトリの口腔組織において、複数のうま味受容体遺伝子が発現していることを見出した。これらの行動解析、並びに発現解析については、当初の予定以上の進展を見せている。一方、うま味受容体の機能解析においては、現在までにニワトリのうま味受容体のうま味物質に対する応答は得られていない。ニワトリの口腔組織に発現しているうま味受容体が実際にうま味物質を受容するかどうかは、ニワトリのうま味受容機構を明らかにする上で重要であるため、今後検討していく必要がある。また、うま味受容体がニワトリの味蕾において発現しているかどうかについても検討していく必要がある。これらのことを考慮し、おおむね順調に進展しているという評価を選択した。

今後の研究の推進方策

次年度については、ニワトリの味蕾におけるうま味受容体の発現を解析していく予定である。ニワトリのうま味受容体を特異的に認識する抗体を作成し、免疫染色によりうま味受容体の局在を可視化する。また、ニワトリの口腔組織の切片のみならず、ニワトリの口腔組織の上皮シートを用いた味蕾の可視化にも挑戦する予定である。上皮シートを用いることにより、より詳細なうま味受容体発現味蕾のマッピングが可能である。これらのデータを苦味受容体発現味蕾や、ほぼ全てのニワトリの味蕾を可視化するビメンチンの発現と比較することにより、ニワトリ口腔組織におけるうま味受容体の空間的な発現パターンを網羅的に把握することができる。さらに、ニワトリ口腔組織の上皮シートにカルシウム蛍光指示薬を負荷し、うま味物質の溶液を接触させた際の応答を可視化し、実際にニワトリの口腔組織の味蕾においてうま味の受容が行われていることを示したいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Short-term perception of and conditioned taste aversion to umami taste, and oral expression patterns of umami taste receptors in chickens.2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Yuta、Kawabata Fuminori、Kawabata Yuko、Nishimura Shotaro、Tabata Shoji
    • 雑誌名

      Physiology & Behavior

      巻: 191 ページ: 29-36

    • DOI

      10.1016/j.physbeh.2018.03.020

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression levels of taste-related genes in palate and tongue tip, and involvement of transient receptor potential subfamily M member 5 (TRPM5) in taste sense in chickens2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Yuta、Kawabata Fuminori、Kawabata Yuko、Nishimura Shotaro、Tabata Shoji
    • 雑誌名

      Animal Science Journal

      巻: 89 ページ: 441~447

    • DOI

      10.1111/asj.12945

    • 査読あり
  • [学会発表] Umami taste sense in chickens characterized by the receptor expression and behavioral responses.2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Yuta、Kawabata Fuminori、Kawabata Yuko、Nishimura Shotaro、Tabata Shoji
    • 学会等名
      日本畜産学会
  • [学会発表] Expression of umami taste receptors and behavioral reactions to umami taste in chickens.2017

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Yuta、Kawabata Fuminori、Kawabata Yuko、Nishimura Shotaro、Tabata Shoji
    • 学会等名
      Association for Chemoreception Sciences
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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