研究課題/領域番号 |
17J03180
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 悠太 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | 味覚 / ニワトリ / 畜産 |
研究実績の概要 |
本年度においては、免疫組織化学染色法を用いて、ニワトリ口腔の味蕾における苦味受容体、並びにうま味受容体の局在を検討した。はじめにニワトリ口腔組織切片において、ニワトリ味蕾の分子マーカーであるVimentin、苦味受容体タンパク質であるTaste receptor 2 type 7 (T2R7)、並びにうま味受容体タンパク質であるTaste receptor 1 type 1 (T1R1)の味蕾特異的な局在を明らかとした。次に、ニワトリ口腔における苦味受容体、及びうま味受容体を発現する味蕾の空間的な分布を検討するため、酵素処理によって剥離したニワトリ口腔上皮シートを用いて免疫組織化学を実施した。その結果、ニワトリ口腔上皮シートにおける苦味受容体、並びにうま味受容体を発現する味蕾の広範な分布を明らかにした。このことから、ニワトリの味蕾における苦味、及びうま味受容に関する分子メカニズムの存在が示唆された。また二光子励起顕微鏡を用いたニワトリ味蕾の3D形態解析により、苦味受容体、及びうま味受容体が単一の味蕾クラスター内の一部の細胞に発現し、味蕾マーカーであるVimentinと細胞レベルではほとんど共発現していないことが明らかとなった。さらにニワトリ口腔上皮シートにおける味蕾数の計測により、うま味受容体を発現する味蕾の数と、苦味受容体を発現する味蕾の数、及び全てのニワトリ味蕾を標識するマーカーであるVimentinを発現する味蕾の数との間に有意な差がみられなかったことから、ニワトリ口腔の大部分の味蕾において苦味受容細胞、並びにうま味受容細胞が分布していることが明らかとなった。これらのことから、ニワトリは口腔の広範な領域において苦味、及びうま味を知覚できる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、ニワトリのうま味受容機構について、主に免疫組織化学的な解析を進め、ニワトリの味蕾における苦味受容体、及びうま味受容体の局在を明らかにしている。また剥離したニワトリ口腔の上皮シートを用い、苦味・うま味受容体を発現する味蕾の分布についても解析を行い、ニワトリの口腔組織の味蕾の大部分にこれらの受容体が発現していることを見出している。これらの成果は、前年度までのニワトリ生体を用いたニワトリの苦味、及びうま味に対する感受性の解析結果と併せ、ニワトリの味蕾における苦味、及びうま味を感じる分子メカニズムの存在を強く示唆するものであり、ニワトリ飼料の嗜好性における苦味物質やうま味物質の重要性が示されたと考える。成果発表については、本年度の研究成果をまとめた原著論文が先日受理されている。本年度に関しては、日本学術振興会の若手研究者海外挑戦プログラムにより、研究機関のほとんどを海外の研究室で過ごしていたが、上記のような成果をあげることができている。これらのことから、本研究課題の進捗状況を「(2) おおむね順調に進展している。」と評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、ニワトリのうま味受容体候補分子T1R1/T1R3 (Taste receptor 1 type 3)の全長塩基配列を5’RACE法により分子クローニングし、新規塩基配列を決定している。これらの塩基配列をベクターに組み込み、ヒト胎児腎臓由来培養細胞であるHEK293T細胞にトランスフェクションする。このニワトリうま味受容体を一過的に発現したHEK293T細胞をカルシウムイメージング解析に供し、うま味物質候補を作用させた際の細胞内カルシウムイオン動態を解析することで、ニワトリうま味受容体の機能を解析する。本解析により、「ニワトリがうま味を感じる物質」を効率的にスクリーニングすることができると考えられる。 また前年度ニワトリの味蕾における苦味受容体、及びうま味受容体の発現を明らかとしており、今後は、ニワトリ味蕾における苦味受容、及びうま味受容における下流伝達分子の発現解析を実施する。苦味・うま味受容に関与する下流伝達分子の候補として、哺乳類の味蕾に発現し、苦味、及びうま味の伝達に関与しているα-GustducinやTRPM5 (Transient receptor potential melastatin 5)のニワトリ味蕾の苦味・うま味受容細胞における発現を解析する。
|