研究課題
味覚は食物がエネルギーになるか、腐敗物ではないかといった情報を判断するための化学感覚であり、動物の摂食行動に深く関与している。本研究では畜産学・比較生理学の観点から化学感覚研究に取組み、産業動物並びに鳥類のモデル動物として有用なニワトリの味覚受容機構に着目してきた。ニワトリの味覚受容機構を理解することで、新規の飼料材料を開発する上での科学的基盤を提供できると考えられる。なかでも私は、食物中のアミノ酸の検出に重要であり、食物の嗜好性に深く関与している「うま味」について着目してきた。哺乳類において、うま味物質は味蕾に発現するGタンパク質共役型受容体であるT1R1/T1R3により受容される。T1R1/T1R3は、細胞膜上でT1R1とT1R3がヘテロダイマーを形成したときのみ、うま味受容体として機能する。本研究では、ニワトリの味蕾におけるうま味受容体サブユニットであるT1R1、並びにT1R3の発現を検討した。まず新たにニワトリのT1R3を特異的に認識する抗体を作製した。この抗体のシグナルが、動物に免疫する際に用いたペプチドとのインキュベートにより消失すること、並びにニワトリT1R3を強制発現させたヒト胎児腎臓細胞 (HEK293T細胞)において特異的なシグナルが観察されることを確認した。この抗体と、前年度独自に作製したニワトリT1R1を特異的に認識する抗体を用いて免疫組織化学を実施したところ、T1R1はビメンチンネガティブな味細胞に、T1R3はビメンチンポジティブな味細胞にそれぞれ主に発現していることが明らかとなった。前年度までの研究により、ニワトリ生体を用いた行動学的な解析から、ニワトリが実際に味覚を介してうま味を感知していることを突き止めている。これらのことから、ニワトリは哺乳類とは異なるうま味受容機構を有している可能性が考えられた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Poultry Science
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https://doi.org/10.2141/jpsa.0190099