本年度は、一部のみ標本の収集に赴いた(いおワールドかごしま水族館等)ものの、主に昨年度までに収集したイソギンチャク標本の形態分析と分子系統解析に重きを置き、研究を重ねた。 形態分析に関しては、(かねてから研究室の備品が旧式であったため)ミクロトームを購入し、より精細な形質の分析を経て、種・属の同定を行った。 分子系統解析は、予定していた18・28SリボソーマルDNAの解析を終え、更に系統樹の解像度を高めるために、進化速度の早いITS領域も新たに加えて、現状最高の解像度の系統樹を構築した。 論文は4本(英文の原著論文3本・和文の総説論文1本)が出版され、申請者が記載した新種は計6種となった。さらに、北海道で80年ぶりに発見されたホソイソギンチャクの論文も受理され、また、和名の存在しなかったイソギンチャクの上位分類群に和名を付加することも行った。さらに現在3本の論文を投稿中であり、学位論文の提出こそならなかったものの、執筆した論文数は予定通りに進めたと言える。 記載したイソギンチャク類の標本は国立科学博物館・千葉中央博物館分館海の博物館に複数登録し、日本のイソギンチャク類の多様性研究の充実に努めるとともに、発見した新種であるテンプライソギンチャクに関してはプレスリリースを東京大学より行い、多数の取材に応じるとともに、テレビ・ラジオ出演・Web記事の執筆・YouTubeチャンネルでの配信、さらに多数の講演会への登壇など、アウトリーチ活動を極めて精力的に行った。
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