研究課題/領域番号 |
17J03290
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩下 和輝 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 卵白 / タンパク質凝集 / オボアルブミン / オボトランスフェリン / リゾチーム |
研究実績の概要 |
卵白はタンパク質含有量が多く、優れたゲル化特性をもつ食品である。実際に、卵白は畜肉加工品や水産練り製品などに添加物として利用され、これらのゲルの物性を向上させている。この卵白ゲルの粘弾性や保水性といった物性はタンパク質凝集体のネットワークに起因する。本研究では、卵白加熱ゲルの物性の起源となる凝集体のネットワーク形成の分子機構を明らかにすることを目的とする。卵白を加熱してできるゲルに関する研究を定量的に進めるため、当該年度は卵白の成分を混合した条件での研究を進めた。具体的には、卵白タンパク質の主成分であるオボアルブミンとオボトランスフェリン、リゾチームの3種を用い、その混合系の熱凝集過程を調べた。まず、オボアルブミンとリゾチームを加熱したときに形成する共凝集が、どのように進むかをサイズ排除クロマトグラフィーや円偏光二色性スペクトル、透過型電子顕微鏡などの方法を組み合わせて調べた。その結果、オボアルブミンは可溶性凝集体ができること、両者を混合してできる凝集体にはいずれのタンパク質も含まれることが明らかになった。詳細を調べると、まず両タンパク質が静電的に会合することで小さな凝集体ができた。この小さな凝集体は電気的に中性であるため、さらなる凝集体の成長には疎水性相互作用が関連することがわかった。このように構築した実験系を用いて、次に、オボトランスフェリンとリゾチームの共凝集を調べた。両者は、殺菌処理に相当する55℃程度の低温加熱で共に凝集してしまうことが以前より報告されていた。その結果、同様に静電的な引力による小さな凝集体の形成と、その後、凝集体同士の会合が階層的に進むことが明らかになった。一定以上の大きさの凝集体になれば不溶化することがわかった。いずれの成果もきわめて定量的な測定に成功しており、凝集体の成長機構モデルを描くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初目標としていた卵白タンパク質混合系の熱凝集過程を2成分のボトムアッブ系で解明することを達成した。卵白タンパク質の主成分であるオボアルブミンとオボトランスフェリンに対し、リゾチームは相互作用して協同的にこれらの凝集体形成を促す過程が明らかとなった。以上の成果から、当初の計画通りに研究が進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究成果によって、あるタンパク質凝集体に対し、それと異なる天然状態のタンパク質が会合することを見出した。しかしその相互作用の理解は不十分であり、凝集機構を精密に制御するためにはこの現象を詳細に分析する必要がある。凝集体の粒径や物理化学的特性を動的光散乱法や蛍光プローブを用いて分析し、会合する異なるタンパク質の性質や量を明らかにする。混合溶液中に各種添加剤を含ませ、相互作用の場を変化させることで、その反応過程や相互作用を明らかにすることを試みる。
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