研究課題/領域番号 |
17J03291
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新津 健一郎 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 中国古代史 / 後漢 / 三国南北朝 / 石刻 / 地域文化 / 地域社会 / 地方支配 / 豪族 |
研究実績の概要 |
本年度は、基礎を構築する一年と位置付け、史料調査・資料収集及び資料分析に重点を置いて研究を行った。また、各論の一部について研究発表及び論文化を行った。 史料調査として3回の海外調査を行った。9月に中国・成都市において成都博物館所蔵石刻、四川大学博物館所蔵画像石、杜甫草堂博物館所蔵唐代墓誌の実見調査、並びに成都市内の石刻出土地点に対する野外調査を行った。1月には中国・重慶市(三峡博物館等)、武漢市(湖北省博物院等)、北京市(国家博物館、石刻芸術博物館等)において所蔵資料の調査を行った。2月にはラオス、王宮博物館等にて銅鼓等の実見調査を行った。以上の調査によって、近年発見の石刻史料、その発見地、石碑に関連する図像・考古資料、境界地帯の考古文化資料に関する知見を蓄積した。 上記の海外調査を含め、研究課題に関する国内外の基本図書、新刊図書、漢籍史料の校訂本等を広く収集し、研究環境を構築した。出土文字資料に関しては、現地調査の結果とこれらの文献史料とを利用して基礎的検討を進めた。 一部の史料については、基礎研究を元に各論の作成に至った。まず、ベトナム出土陶列侯碑について出土資料学会大会(7月)にて研究報告を行い、論文を投稿した(報告書作成時点で査読中である)。また、成都出土爨公墓誌は、三世紀以来の雲南社会に関連する史料だが、講読会及び清華大学・ソウル大学との学生交流会(10月)での報告を経て「東アジア世界における「内」と「外」」ワークショップ(3月)にて研究報告を行った。加えて、後漢時代の地方長官任用傾向について、出土文字資料を踏まえて統計分析を行い、史学会大会東洋史部会(11月)にて研究報告を行った。最後に、本研究対象地域の中核都市たる成都につき、『アジア遊学』に概説的文章を発表した。執筆過程では、本研究の総論を意識して各種文献から通史的、網羅的史料収集作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に即して現地出版物を含む図書、漢籍史料の校訂本等を収集し、三度にわたる現地調査の成果を踏まえて史料校訂作業及び史料研究を行うことができた。手配期間等の都合により入手できなかった文献は、第二年度以降に補う予定である。 また、おおよそ計画に沿って、史料研究の成果を三度の学会報告及び二度の研究会報告によって公表することができた。うち一件は論文を投稿中であり、二件について論文を執筆中である。史料校訂作業及び史料研究を通じて、第二年度に予定する口頭報告・論文執筆に向けた準備を進めることも達成された。 最後に、『アジア遊学 魏晋南北朝史のいま』への原稿執筆を通じ、成都とその都市圏に関する文献史料を整理した。これにより、研究のまとめに向けた史料的準備を進めることができた。 以上のように、研究材料の準備がほぼ計画通り進展し、学会報告・論文発表に取り掛かるとともに、研究の全体像についても見通しを得ることができた。よって、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
史料・文献収集を継続しながら、史料分析と論文執筆に重点を移して研究を遂行する。 平成29年度に実見しえなかった石刻史料、及び同年度の論文執筆作業を通じて検討を要する史料として新たに浮上したものについては、引き続き海外調査を行う。平成29年度に得た資料等を利用し、より円滑に調査を行うことが見込まれる。文献資料についても同様に、第一年度の収集作業を踏まえて補充を加えていく。 成果発表に関しては、平成29年度に行った史料検討を基礎に、各論の論文化を進める。執筆中の論文を投稿にこぎつけること、並びに新規に着手する論文・書評を年度末までに形にすることを予定している。同時に、第一年度に収集した史料及び文献を利用して総論の構築にも着手する。これにより、研究全体の着地点を意識して各論をまとめていく予定である。
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