研究課題/領域番号 |
17J03331
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
楠見 友輔 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 交流及び共同学習 / 交流経験 / 交流の質 / 主体性 |
研究実績の概要 |
【具体的内容】研究者の研究テーマは交流及び共同学習における知的障害児の経験の解明である。このテーマに対して、①健常児側の交流経験の解明、②障害児の経験を分析する上での基礎研究、③データの収集、④研究の発信、の4点から研究を進めた。 ①について、前年度までに収集した健常児と知的障害児との間で行われた学校間交流の映像記録と健常児へのインタビューのデータをもとに、学校間交流中の健常児の障害理解のあり方や、健常児が交流を「質の高い交流」とみなす条件を明らかにした。前者については「知的障害児との交流における健常児の集団カテゴリー意識を規定する条件」『東京大学大学院教育学研究科紀要57号』、後者については「知的障害児との交流の質を規定する条件:交流経験の語りの質的分析」『特殊教育学研究55巻4号』に掲載された。 ②について、知的障害児の交流経験を、交流中の健常児との相互活動から分析する手法を開発するための基礎研究として、行為に含まれるagency(行為主体性)という概念に着目し、海外のagency概念についての整理を行った。研究結果は「学習者の「媒介された主体性」に基づく教授と授業:社会文化的アプローチの観点から」『教育方法学研究43巻』に掲載された。 ③について、H29年度に都内の1つの特別支援学校において4回の交流及び共同学習を含む合計103日間の授業をビデオカメラで記録した。現在データを分析中である。 ④について、特殊教育学会第55回大会において自主シンポジウム「交流及び共同学習の事例を探求する:知的障害児・健常児にとっての交流の目的と評価」(『特殊教育学研究55巻5号』に報告書)の企画と話題提供を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、H29年度に1つの知的特別支援学校におけるフィールドワークを通して授業の実践の記録を収集することができた。また、H29年度に申請テーマに関する2本の査読付き学会誌論文、1本の紀要論文を発表することができた。 研究対象以外の学校での交流共同学習の参観や、自主シンポジウムなどを通した実践者や研究者との交流を通して、交流共同学習に対する課題の明確化や研究の方向性についての示唆を得ることができた。 H29年度に収集したデータに関しては現在分析を行っており、H30年度中に研究成果を公表したいと考えている。 また、H30年度は交流及び共同学習に参加した軽度知的障害児の交流経験をインタビューによって明らかにする研究ができないかと考えており、現在研究協力者と調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は①軽度知的障害児の交流経験の解明、②知的障害児の交流中における行動変容に関する分析、③研究の発信の3点から研究を進めていく予定である。 ①について、軽度知的障害児を対象に、交流及び共同学習への参加後にインタビューを行い、健常児との交流についてどのような思いや考えを抱いているかを質的に分析する研究を実施するために、現在研究協力者との調整を行っている。協力校は7月以降に4回の交流を計画しており、交流の参与観察とビデオカメラによる記録、各交流会後に軽度知的障害児に対して映像記録を見せながらインタビューを行い、交流経験の語り方や語りの変化を分析することを考えている。 ②H29年度に収集した知的特別支援学校の授業の映像記録をもとに、普段の授業と交流の最中における知的障害児の行動や他者との相互活動について比較研究を行う。 ③H29年度に続き、9月の特殊教育学会第56回大会において交流及び共同学習の自主シンポジウムを企画し、研究の進捗状況の報告と研究結果の発信、実践者や他の研究者との情報交換を行う予定である。
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