研究課題
研究代表者は、低酸素トレーニングが通常酸素環境下でのトレーニングと比較して無酸素性能力を大きく改善させることを明らかにしてきた(Kasai et al. 2015)。さらに、低酸素トレーニングに対する適応を、運動パフォーマンスや骨格筋内のエネルギー基質量(クレアチンリン酸量、グリコーゲン量)の変化から検討してきた(Kasai et al. 2017)。低酸素環境下におけるトレーニングが無酸素性能力の改善に及ぼす効果とその機序を明らかにし、効率的な低酸素トレーニングプログラムを提案することを目的に研究を実施してきた。今年度は、低酸素環境下での一過性の高強度運動に伴う骨格筋内のグリコーゲン量の変化を、通常酸素環境下で同様の運動を実施した条件と比較することを目的に実験を実施した。陸上競技短距離選手10名を対象に、高強度運動を低酸素環境下で実施する条件(酸素濃度:14.5%)または通常酸素環境下で実施する条件(酸素濃度:20.9%)をそれぞれ異なる日に実施した。運動は、自転車エルゴメーターを用いた30秒間全力ペダリングを8分間の休息を挟み、3セット実施した。運動前後には、超伝導MRI装置を用いて骨格筋内のグリコーゲン量(炭素磁気共鳴分光法)を測定した。各セット後には、血中乳酸濃度を評価した。また、運動時における発揮パワー、心拍数、動脈血酸素飽和度、筋酸素飽和度、呼気ガス指標(酸素摂取量、二酸化炭素排出量、換気量、呼吸交換比)および主観的疲労感を測定した。その結果、動脈血酸素飽和度および筋酸素飽和度は低酸素条件が通常酸素条件と比較して有意に低値を示した(P < 0.05)。血中乳酸濃度は運動に伴い有意に上昇したが(P < 0.05)、条件間での有意な差はみられなかった。骨格筋内のグリコーゲン量については、現在データの解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に予定していた実験(研究課題:低酸素環境下での高強度運動に伴う骨格筋内のグリコーゲン量の変化)を終えることができた。データ解析に多くの時間を要したが、解析の目処も立てることができた。また、平成30年度に実施する研究の予備実験も進めており、概ね順調に進んでいると判断した。
今後は、低酸素環境下での高強度運動が糖代謝に及ぼす影響を検証する予定である。無酸素性能力の改善をねらいとした低酸素トレーニングプログラムの開発に向けて研究を推進する。また、昨年度実施した研究成果を国際誌へ投稿する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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