研究課題/領域番号 |
17J03475
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
成瀬 公人 徳島大学, 大学院薬科学教育部, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | ペプチドチオエステル / チオエステル前駆体 / N-Sアシル転移 / native chemical ligation / 固相ペプチド合成 / CXCL14 |
研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質化学合成に必須なペプチドチオエステルの効率的合成法の開発を基盤としたケモカインCXCL14の機能発現機構の解明と創薬への展開を目的としている。前述の目的を達成するために平成29年度は申請書で示した通り、CXCL14の効率的合成法の確立に取り組んだ。これまでのCXCL14合成において、N末端フラグメント (ペプチドチオエステル) の合成法に改善の必要があった。そのためまずペプチドチオエステルの効率的合成法の開発に取り組むこととした。ペプチドチオエステル合成では、独自に開発したクマリン型N-sulfanylcoumarinyl amide (SECmide) に着目した。SECmideは通常アミド型で存在し、弱酸性条件下、分子内N-Sアシル基転移反応によりチオエステル型に変換する性質を持つ。そこでまず、SECmideをペプチドに導入しペプチドチオエステル合成が可能か検証したところ、当初の狙い通りペプチドチオエステルの合成に成功した。続いてSECmideペプチドによるペプチドチオエステル合成のさらなる効率化を図るために、固相合成に用いる樹脂上での直接チオエステル化が可能か検証した。種々条件検討の結果、弱酸性条件下、当研究室で開発しているアニリン型N-sulfanylethylanilide (SEAlide) ペプチドを用いた場合に、最も良好な収率でペプチドチオエステルを得ることに成功した。最後に、今回確立したSEAlideペプチドを用いた樹脂上でのチオエステル合成法が、CXCL14のN末端フラグメント合成に適用可能か検証した。その結果、本合成法によりCXCL14のN末端フラグメントを合成可能であることを明らかにした。また、本合成法によりCXCL14の大量合成法の確立および、各種改変部位を導入したCXCL14誘導体の合成も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成29年度はCXCL14の効率的合成法の確立に成功し、種々改変部位を導入したCXCL14誘導体の合成に成功した。さらに本合成法によりCXCL14大量合成法の確立も行った。申請者は、CXCL14の効率的合成において課題であったN端側フラグメント (ペプチドチオエステル) の合成において、独自に開発したクマリン型N-sulfanylcoumarinyl amide (SECmide) を用いたペプチドチオエステル合成法が有効になり得ると考え、申請書に示した通り反応の最適化を行った。続いて本合成法によるペプチドチオエステル合成のさらなる効率化を目指し、樹脂上での直接チオエステル化が可能か検証した。種々条件検討の結果、弱酸性条件下、当研究室で開発しているアニリン型N-sulfanylethylanilide (SEAlide) を導入したペプチドの場合に、最も良好な収率でペプチドチオエステルを得ることに成功した。このSEAlideを用いた樹脂上でのチオエステル合成法は従来法と比べ、すべての操作が同一樹脂上で行えるため操作が簡便である利点を持つ。そのため本手法は、CXCL14に限らず幅広いペプチド合成において有用であると考える。そして、これら結果をまとめ論文投稿も行った。これらの研究実施状況より、平成29年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度に確立した効率的ペプチドチオエステル合成法を基盤に合成した各種CXCL14誘導体を用い、in vitro実験により活性評価を行う。そしてその結果をふまえ、活性発現に直接関与するペプチド配列および構造部位の同定を行い、新たなCXCL14誘導体の合成を行う。またこれまでの実験結果より、CXCL14が細胞外のCpG ODNを細胞内リソソーム中のTLR9に運搬する運び屋分子として機能し、自然免疫賦活化に関与していることが示唆されている。そのため前年に確立した合成法により、蛍光色素やビオチンによる化学修飾を施したCXCL14を合成し、CXCL14の細胞内局在および、CXCL14とCPG ODNとの直接的な結合に関する評価についても行う。さらに、前年度確立した合成法によりCXCL14の大量合成が可能となったため、CXCL14とCpG ODNとの詳細な結合情報を取得するため、NMR解析およびX線結晶構造解析にも取り組む。以上の研究を通じて本年度では、CXCL14の活性発現機構の詳細に迫る予定である。
|