研究課題/領域番号 |
17J03475
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
成瀬 公人 徳島大学, 大学院薬科学教育部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | CXCL14 / 固相ペプチド合成 / native chemical ligation / ペプチドチオエステル / チアゾリジン誘導体 |
研究実績の概要 |
本研究では、効率的なタンパク質化学合成法の開発を基盤としたケモカインCXCL14の機能発現機構の解明と創薬への展開を目的としている。前述の目的を達成するために平成30年度は申請書で示した通り、平成29年度に確立した合成法により合成した各種CXCL14誘導体を用い、CXCL14のCpG ODNとの結合に重要な構造の同定に取り組んだ。その結果、CXCL14のN末端領域である1-50残基の部分構造だけでもCpG ODNと結合することが明らかになった。そこで、CXCL14のN末端領域のCpG ODN結合部位の詳細を解明するために、N末端領域に各種改変を導入した誘導体合成に取り組むことにした。しかし、平成29年度に確立したCXCL14合成法は、CXCL14の三つのペプチドフラグメントをN末端側からC末端側へと伸長する手法(N to C縮合法)であるためN末端領域に各種改変を導入した誘導体合成に適さなかった。 そこで平成30年度では次に、N末端領域に各種改変を導入した誘導体合成に適した、ペプチドフラグメントをC末端からN末端へと伸長する手法(C to N縮合法)の確立に取り組んだ。申請者は、C to N縮合法の確立において課題であったチアゾリジン誘導体からシステインへの変換反応において自身が遭遇した、銅試薬を用いたクリック条件により一部のチアゾリジン誘導体がシステインへと変換される副反応に着目し、本副反応を基盤としたCXCL14のC to N縮合法の確立に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成30年度は1年目の結果に基づき合成したCXCL14誘導体を用いin vitro実験により活性評価を行った。in vitro実験の結果、CXCL14のN末端領域である1-50残基部分がCpG ODNとの結合に関与していることが示唆された。そこで、CXCL14のN末端領域のCpG ODNに対する結合情報の詳細に迫るべく、N末端領域に各種改変を導入した誘導体合成に適した、ペプチドフラグメントをC末端からN末端へと伸長する手法(C to N縮合法)の確立に取り組んだ。申請者は、C to N縮合法の確立において課題であったチアゾリジン誘導体からシステインへの変換反応において、自身が遭遇した銅試薬を用いたクリック条件により一部のチアゾリジン誘導体がシステインへと変換される副反応に着目した。そこでまず本副反応がCXCL14のC to N縮合法に適用可能か検証するために、反応条件の最適化を行った。条件検討の結果、中性緩衝液中、硫酸銅およびアスコルビン酸を添加することで、チアゾリジン誘導体からシステインへの変換反応が円滑に進行することが明らかになった。そして最適化した本反応を基盤とし、CXCL14のC to N縮合法の確立に成功した。 これらの研究実施状況より、平成30年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、前年度に確立したペプチドフラグメントをC端側からN端側へと伸長する手法(C to N縮合法)を用い、CXCL14のN末端領域である1-50残基に各種改変を導入した誘導体の合成を行い、in vitro実験により活性評価のスクリーニングを行う。そのスクリーニング結果をもとにCpG ODNとの結合に重要なCXCL14構造の同定に取り組む。また、前年度から取り組んでいたCXCL14とCpG ODNとの詳細な結合情報を取得するため、NMR解析およびX線結晶構造解析にも継続して取り組む。 また申請書で示した通り、これまでに確立したCXCL14の大量合成法を基盤としin vivo実験を行い免疫活性化がin vitro実験の時と同様に観察されるか検証する。in vivo実験で同様に活性化が確認できれば、前年度の結果と合わせ、高活性型、不活性型のCXCL14 誘導体の作成を行う。それらCXCL14 誘導体を基盤とし、免疫活性化アジュバントをはじめとした医薬品への応用を目指す予定である。
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