研究実績の概要 |
国立天文台野辺山45m望遠鏡を用いて、大質量星形成領域の17個の星なしコアと28個の星ありコアの炭素鎖分子、HC3N, CCS, cyclic-C3H2、及びN2H+のサーベイ観測を実施した。大質量星形成領域での化学進化の指標の確立を目的としたものである。HC3N/N2H+の存在量比は増加することがわかった。これは、大質量星形成領域では、温度が高いため、ダストから昇華してくる分子であるCH4やC2H2がHC3Nを新たに生成しているためと考えられる。この結果について議論するため、アメリカのハーバード-スミソニアン天体物理学センターの共同研究者を2週間訪問し、投稿論文としてまとめる準備を行った。 野辺山45m望遠鏡を用いて、2つの中小質量星形成領域の星なしコア、L1521B及びL134N、のHC3Nの13C同位体分別の観測を行い、それぞれの天体におけるHC3Nの主要な生成経路を調べる観測を行った。その結果、L1521BではC2H2とCNの反応、L134NではCCHとHNCの反応がそれぞれ優位であることがわかった。先行研究では、TMC-1の観測が行われており、C2H2+CNが優位であることが知られていた。これら3天体はいずれも物理環境が似ているにも関わらず、このような違いが見られた理由として、コアの年代が関わる可能性を化学反応ネットワークシミュレーションを用いて示した。 アメリカのVery Large Array干渉計で得られたG28.28-0.36の大質量星周辺のHC3N, HC5N, HC7Nの観測結果の解析を行い、他望遠鏡のアーカイブデータと合わせることで、暖かい領域にこれらの炭素鎖分子が存在しているか調べた。
|