研究課題
本年度ではまず、膜厚変調および原子吸着によって制御されたBi薄膜の光電子分光測定と第一原理計算、タイトバインディング計算、モデル計算を段階的に組み合わせることで、半世紀前から議論が続いてきた半金属-半導体転移の完全な描像を得ることに成功した。Bi薄膜の厚みが原子層スケールまで小さくなると、Biのトポロジカル表面電子状態の影響が増大していき、その表面の電荷分布の電子相関効果によって、量子化ポテンシャル自体が変形されていくという驚くべき描像である。近年注目を集めるトポロジカル物質のナノ構造において普遍的に存在する効果として、広い波及効果を持つと期待される。これは、この研究課題を開始した時点では全く予想していなかった展開であり、国際学会TASPECにてBest Student Presentation Awardを受賞した。結果を論文にまとめており、現在高インパクトファクター論文誌で査読中である。スピン分解時間分解光電子分光の立ち上げについては昨年度から引き続きテスト測定を行ったが、磁場の影響が予想以上に強く、磁気遮蔽のさらなる改善が必要であることが明らかになった。改良型磁気シールドの納入が遅れてしまったことが影響し、標準試料を用いたテスト測定の段階に留まった。Bi薄膜のスピン積分の超高速ダイナミクスについては、時間分解光電子分光測定に加えて、より精密な数値シミュレーションを行うことでサブピコ秒領域の光起電力生成機構を解明した。さらに、基板条件を精密に制御した光電子分光測定を行い、Bi薄膜特有の基板からの独立性がこの結果の背景にあることも明らかになった。これらの論文を準備中である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Materials
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Applied Physics Letters
巻: 112 ページ: 1-5
10.1063/1.5026351