研究課題
今日の暗黒物質直接探索実験では、DAMA実験が観測を主張しているが、他の実験グループでは観測が認められておらず、観測結果に矛盾が生じている。本研究目的は、DAMA実験とは別の観測手法である、方向情報を用いた暗黒物質探索を行うことでこの問題を解決することにある。本年度、2018年に神岡地下実験施設にて取得されたデータを解析し、方向情報を用いた手法によって暗黒物質探索を行った。このデータは本研究テーマの主要開発部分である陰イオンガス飛跡検出器で取得されたものではなく、従来から存在するガス飛跡検出器によって取得されたデータである。しかし、ここで開発された解析手法は次期探索計画でも同様に使用できるものであり、非常に有用性がある。小型の陰イオンガス飛跡検出器は昨年度にすでに開発と性能評価が完遂した。方向情報を用いた手法では、観測された原子核の反跳角分布を測定し、その非対称度を測定することで暗黒物質の有無を判定する。追加較正用データを取得し、角度分解能を測定することで、期待される非対象度が31%であることが得られた。次に、観測データを事象選別した。50-60 keVのエネルギー帯域に原子核反跳事象の候補として残ったのは2事象であった。これらが暗黒物質由来の信号であるかを確かめるために、反跳角度分布を作成し検定を行ったが、統計的に有意な発見には至らなかった。そのため、暗黒物質の散乱断面積に90%の信頼度の上限値を与えた。DAMAが暗黒物質の存在を示唆する領域(DAMA領域)を観測するだけの感度には到達できなかったが、この上限値は先行研究の約15倍の感度向上に値し、方向情報を用いた実験では世界最高感度を更新したことになる。DAMA領域を探索するためにはあと10倍の感度向上が必要であるが、これはすでに性能評価済みである陰イオンガス飛跡検出器を使うことで現実的に達成可能である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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