研究実績の概要 |
本研究では機械学習の一手法の学習分類子システムを用いて、実環境から取得されたデータから人間にとって解釈性の高いルールを獲得するために(1) 環境からの入力, 環境への出力及びその出力に対する評価である報酬が「特定」の分布に従う環境への適応,(2)入力, 出力及び報酬が「不特定」の分布に従う環境への適応, (3)学習に用いるデータ数が少なく入力の種類に偏りがあり十分に環境全体を網羅できない環境への適応に取り組む。 その目的達成に向け平成29年度は(1)及び(3)に対して取り組んだ。(1)に関しては出力の値に対して特定の雑音が付加された環境において、雑音の影響を除去した際に評価対象のルールが獲得する報酬の値を推測することで適応可能な学習分類子システムを構築し、(3)に関しては学習データの入力の種類に偏りがある環境において極端に高い報酬あるいは極端に低い報酬を獲得するルールに絞って獲得する学習分類子システムを構築した。 本研究の成果の社会に向けた発信として、(1)に関わる成果を1件の英語論文誌Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics (JACIII), 国際学会のIEEE Congress on Evolutionary Computation (CEC) 2017及びThe Genetic and Evolutionary Computation Conference (GECCO) 2017において各1件発表した。 (2)に関わる成果を計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会(SSI) 2017に発表し、SSI優秀論文賞を受賞した。また、共著として2件の英語論文誌(共にJACIII), 2件の国内学会 (SSI 2017及び第60回自動制御連合講演会)において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、申請書に記載した計画を進めることを基本とする。(1)入力, 出力及び報酬が「特定」の分布に従う環境への適応,(2)入力, 出力及び報酬が「不特定」の分布に従う環境への適応, (3)学習に用いるデータ数が少なく入力の種類に偏りがある環境への適応をさらに進めていく。 具体的には(1)に関しては、入力に対して特定の雑音が付加される環境に適応可能な学習分類子システムを構築し、これまでに構築した手法の学習性能などを加味して、入力に対する雑音, 出力に対する雑音及び報酬に対する雑音それぞれの影響度合いの関連性を明らかにする。例として、出力に対する雑音の単純な影響と入力に対する雑音の非線形で複雑な影響の比較を挙げる。次に(2)に関しては、入力, 出力及び報酬に離散・連続問わずに雑音を付加し、元の入力, 出力及び報酬の分布及びそれぞれの雑音の分布による影響度合いの差異を明らかにする。そして(3)に関しては、分類問題においてベンチマークとして用いられる問題に雑音を付加した問題への適応および、所属研究室独自に介護施設において取得する介護プランと睡眠の質の関係のデータに適応を図る。分類性能の向上及びプラン設計において有用なルールの獲得性能の向上により学習分類子システムの実環境から得られるデータに対する適用性を高める。 最後に、昨年度に引き続き国内・国際学会(GECCO 2018 Workshop採択済み)及び学術雑誌において、本研究成果を社会に向けて発信する。
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