研究課題
当該年度では、放射線増感剤である金ナノ粒子がクラスターを形成した場合の線量増加をモンテカルロシミュレーションにより計算し、クラスター形成を考慮しなかった場合と比較した。本研究について論文を国際雑誌に投稿し、当該年度に受理された。また、米国ハーバード大学医学部に1年4ヶ月間滞在し、金ナノ粒子の血管破壊剤利用について以下の研究を行った (2017年12月~2019年3月)。まず、超音波撮像法であるAcoustic Angiographyを用いて腫瘍の微細血管を非侵襲的に撮影し、金ナノ粒子と放射線治療を組み合わせたときにマウス腫瘍に起こる血管破壊効果を評価した。特に、マウス腫瘍血管の3次元空間分布を定量的に把握する手法を確立した。さらに、治療前のAcoustic Angiography画像から微細血管の特徴量を抽出すると、腫瘍の長期的な成長度を予測できる可能性が示唆された。本研究についてThe AAPM 60th Annual Meetingにおいて口頭発表を行った。この演題を基に論文を執筆し、国際雑誌に投稿した。この論文は現在Major Revisionの段階にある。腫瘍の血管破壊治療後には、腫瘍内部に低酸素領域が発生することが予想される。そこで次に、マウス腫瘍の低酸素領域をMRIによる低酸素領域イメージング手法である、Blood Oxygen Level Dependent (BOLD) 法を用いて定量化する研究を行った。研究の初期段階として最適な撮像条件や腫瘍モデルを探索していく中で、マウスの体動の影響を受けにくいGlioblastomaがBOLD法に適した腫瘍モデルであることが分かった。未治療のマウスGlioblastomaを用いた実験の結果、腫瘍領域は正常組織と比較して比較的低酸素状態にあることが確かめられた。
2: おおむね順調に進展している
クラスター形成時の金ナノ粒子による線量増加を推定した論文が、国際雑誌に受理されたため。また、ハーバード大学医学部の研究室との共同研究により、ナノ粒子の血管破壊剤としての利用へと研究が発展し、超音波・MRIを用いた腫瘍の機能評価手法を確立したため。
次年度は、所属機関にて引き続き研究を遂行する。具体的には、マウス腫瘍に対し血管破壊治療を施し、低酸素領域をBOLD法により定量化する。さらに、低酸素領域を放射線治療のみの場合と比較する。留学先であったハーバード大学の研究室とは共同研究を継続し、定期的に遠隔でのミーティングを行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
巻: 429 ページ: 34~41
10.1016/j.nimb.2018.05.033