研究課題/領域番号 |
17J03639
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 善範 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | 重力波 / 大型低温重力波望遠鏡KAGRA / 低周波防振 / 重力波検出器による早期方向特定 |
研究実績の概要 |
二年目の年度である2018年度の前半は、感度の異なる複数台の重力波望遠鏡を用いた波源の早期方向特定精度に関するシミュレーションを行った。これは、地面振動雑音を含めた雑音の評価結果を、その後の検出器の感度や安定性の向上、また電磁波によるフォローアップ観測に向けた波源天体の方向特定精度の改善に、どれだけ活かすことができるかを知るためである。KAGRA のコミッショニング時における地面振動雑音の低減度合の目安を得ることや、コミッショニング進行中の感度の低い検出器をどの感度から観測ネットワークに加えることができるかを知ることが、その具体的な目的である。前年度にも同様のシミュレーションを行い、早期方向特定精度の見積もりを計算していたが、当時、現実的ではない結果が部分的にあることが分かっていたため、本年度は、シミュレーションの一部手順の改善を行い、より定量的な結果を得た後、議論を行った。 また特に2018 年度後半は、KAGRA サイトにて、干渉計を構成するいくつかの鏡を懸架するサスペンションのインストール作業に従事した。またこれらサスペンションに用いられるセンサの雑音の評価を行い、制御雑音の見積もりに必要なデータの測定を行った。サスペンションのインストールが完了した後、外乱によりサスペンションが大きく揺れてしまった際に、その揺れを早期に減衰させるためのフィードバック制御ループの実装を行った。この実装は主に、メインアーム共振器を構成する鏡のためのサスペンションに対して行い、これによりX アーム共振器を共振状態に保つことが可能であることを確かめた。ただし現状、地面振動レベルが高い時期は腕共振器の共振状態を保つことが困難であることがある状況のため、現在はループの改善に当たっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目の年度である2018年度も継続して、KAGRAが干渉計として動作した後の観測方法に関する研究および議論を行ったこと及び、KAGRAサイトでのサスペンションのインストレーション完了までに計画以上に時間がかかったことにより、当初の予定に比べて多少の圧迫感はあるが、おおむね順調に進行している。装置自体のインストールの後の、インテグレーション、メンテナンスに、計画以上に大幅な時間を割かなければならなかったことが、その原因である。 各鏡を懸架するサスペンションのメンテナンス状況に関しては、他研究者と分担、協力しながら進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目は、2年目に引き続き、KAGRAサイトにおいて制御ループの作成と実装及び調整を行い、観測段階における、干渉計への地面振動雑音の寄与を評価する。具体的には、まず第一段階の制御ループの調整やその最適化を行う予定である。この制御では主にダンピングを行うものであり、大きな外乱などを短時間に鎮めるためのものである。干渉計を安定に長時間動作させることがその目的である。次に、この他観測中などの干渉計を動作させる期間における制御および、干渉計動作時の制御系の調整に取り組む予定である。 以上、上記のように、KAGRA を干渉計として動作させ干渉計への地面振動雑音の寄与を評価し、かつ、KAGRA がスムースに重力波観測ネットワークに加わる方法を計画をしていくことが、今後の研究の推進方策である。
|