三年目の年度である2019 年度は、主に以下二つの項目について研究を進めた。 一つ目の項目として、前年度から引き続き、感度の異なる複数台の重力波望遠鏡を用いた波源の早期方向特定精度に関するシミュレーションを進め、2018年度までに行った内容を投稿論文として発表した。 これを行っていた目的は、地面振動雑音を含めた雑音の評価結果を、その後の検出器の感度や安定性の向上、また電磁波によるフォローアップ観測に向けた波源天体の方向特定精度の改善に、どれだけ活かすことができるかを知るためであった。そのシミュレーションの内容として、いくつかの感度において、既存の米国LIGOによる観測ネットワークに、ヨーロッパの検出器Virgo と日本の検出器KAGRAが参加した際に、どれだけ方向特定の精度を向上させることができるかの見積もりを定量的に行った。本解析には、既存の二つのアルゴリズムを用い、実装した場合のインパクトを、より実際に近い形で見積もった。この内容は、LIGO-Virgo グループの協力の下、フランスの研究グループとともに行ったものである。 二つ目の項目として、2019年度は特にKAGRAサイトにて、干渉計を構成する主な鏡を懸架するサスペンションのインテグレーション作業及び修理作業に、まず従事した。その後、メインアーム共振器を構成する鏡を懸架する高さ13.5m のサスペンションのための制御フィルターをシミュレーション上でデザインし、性能を見積もった後に、実際のサスペンションに実装した。この制御システムの構築完了より干渉計の運転を開始させることが可能となった。上記のサスペンションに関する内容は、日本天文学会2019 年秋季年会及び、13th Edoardo Amaldi Conference on Gravitational Wavesにて報告した。 上記二項目を博士論文としてまとめた。
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