研究課題/領域番号 |
17J03677
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
穐枝 佑紀 群馬大学, 生体調節研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 発生 / 細胞競合 / Wntシグナル / モルフォジェン |
研究実績の概要 |
動物の組織構築は、Wnt/β-cateninシグナルやBMPシグナルなどのモルフォジェンシグナルの活性強度勾配によって制御されている。私は、これまでの研究で、β-catenin活性に異常を持つ細胞が周辺の正常細胞の働きによって初期胚から積極的に排除されることと、この異常細胞排除を人為的に抑制すると胚発生に異常が生じることを示した。私はこの知見から、動物初期胚はWnt/β-cateninシグナル依存的な組織構築プログラムを確実に実行するために“不適切なβ-catenin活性強度を持つ細胞”を感知して積極的に取り除くシステムを備えている、という仮説を立てた。しかしながら、動物組織がどのようなメカニズムでWnt/β-catenin異常細胞を感知して排除するのか、については不明である。まず網羅的RNA-seq解析を行い、Wnt/β-cateninシグナル異常細胞の排除にかかわる制御因子の候補を絞り込んだ。その候補因子群の機能解析を行った結果、制御因子として、TGF-β/Smadシグナル経路が異常細胞排除に必要であることが明らかになった。さらに、ほかの候補因子として、活性酸素種(Reactive oxygen species/ ROS)を制御する分子群が変動していたが、ROSの産生上昇が異常細胞のアポトーシスによる排除に必要であることも明らかになった。また、異常細胞のアポトーシス誘導に必要なROS産生の上昇は、上記のTGF-β/Smadシグナル経路の活性化によって引き起こされることが判明した。Wnt/β-catneinシグナル異常細胞がどのように感知されるのかに関して、β-cateninが結合する細胞接着分子であるcadherinが関与することを明らかにした。Wnt/β-cateninシグナルの異常がcadherinを介して周囲の細胞に感知されて、その結果、上述のTGF-β/Smadシグナル経路の活性化を引き起こして、異常細胞がアポトーシスによって排除されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wntシグナル異常細胞を排除するシステムのメカニズムの解析に注力し、網羅的な解析などからどのように異常細胞を感知して、どのように細胞死が誘導されるのかの分子基盤を明らかにできた。この成果については、投稿段階に入っており、次年度には論文としての報告が完成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Wnt/β-cateninシグナルは、初期胚だけでなく腸管や肝臓などの生体組織においても活性勾配を形成しており、その組織の機能や恒常性維持に寄与する。今後は、ゼブラフィッシュを用いた解析から明らかになった、Wntシグナル異常細胞の排除システムが、生体組織でも起きるのかについて解析を進めていく。また、BMPシグナルやShhシグナルは、Wnt/β-cateninシグナルと同様に、動物初期胚において強度勾配を形成して組織に位置情報を与え、胚発生を支えており、その勾配の乱れは胚発生を破綻させる。この事実は、BMPシグナルやShhシグナルの活性異常を生じた細胞も、Wnt/β-cateninシグナル異常細胞と同様に、ゼブラフィッシュ初期胚から排除される可能性を期待させる。BMPシグナルとShhシグナル異常細胞も排除されるのかについて解析を行う。これらのシグナル異常細胞とWnt/β-cateninシグナル異常細胞の排除のメカニズムが共通の分子基盤を介するのかなども解析していく。
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