研究課題
慢性的痒みは睡眠障害、過度の肉体疲労、精神的ストレスをもたらしQOLを著しく低下させることから、その制御はきわめて重要な課題である。当研究室では、脊髄後角に存在するアストロサイトの活性化及び産生されるLipocalin-2 (LCN2)が、慢性的な痒みのメカニズムにおいて重要な役割を担うことを明らかにしている。この活性化アストロサイトによる痒みの増強メカニズムを明らとする目的で、昨年度は脊髄後角でかゆみ伝達に重要な神経細胞であるgastrin-releasing peptide receptor(GRPR)陽性神経に着目し、接触性皮膚炎モデルマウスにおいてGRPR陽性神経の痒み伝達物質(GRP)に対する応答性が著明に増強していることを明らかとした。今年度は慢性掻痒時に増強される痒み伝達のメカニズムを明らかとするため、アストロサイトの活性化に重要な転写因子であるSTAT3に着目した。脊髄後角のSTAT3機能を抑制する目的で、ドミナントネガティブSTAT3(dnSTAT3)をアストロサイト特異的に発現させるウイルスベクターを用いて検討を行った。dnSTAT3マウスでは慢性掻痒モデルマウスで認められるアストロサイトの活性化が著明に抑制されており、さらに接触性皮膚炎による痒み行動や皮膚炎が慢性期において優位に抑制された。さらに接触性皮膚炎で増強されるGRPR陽性神経の痒み伝達物質(GRP)に対する応答性がコントロールレベルまで減少した。このマウスでは、過去に特定したアストロサイト産生因子であるLCN2のmRNAが著明に減少していることから、GRPR陽性神経の神経伝達増強にLCN2が関与することが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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