研究実績の概要 |
本研究では、有機半導体と金属錯体を融合した光触媒を用い、可視光照射下、水中にて、水を還元剤とした二酸化炭素還元反応の駆動を目指して研究を推し進めている。 この反応の駆動するための前段階として、可視光照射下にて、水溶液中で二酸化炭素の還元反応を駆動させることが必要不可欠である。可視光下、水溶液中にて二酸化炭素の還元反応を駆動した例は少数あるが、いずれも副反応である水素生成反応が競合し、目的とする反応(二酸化炭素の還元反応)を高効率、高選択的に駆動することは困難であった。事実として、我々が報告した先行例(R. Kuriki., et. al, J.Am.Chem.Soc.2016,138(15),5159-5170.)では、二酸化炭素還元における触媒の回転数、選択率は、それぞれ660, 75%程度に止まっていた。本年度はこの改善を目指した。低い活性(選択性)の主要因として、水溶液中における反応条件の検討が不十分、かつ水溶液中で金属錯体が有機半導体上から脱離することが挙げられる。 本年度の研究にて、従来のメソポーラス構造を有する有機半導体カーボンナイトライドからナノシー ト構造を有する有機半導体へと半導体部位を変化させることで、金属錯体とホスフォン酸アンカーを介して比較的強固に複合化できることを見出した。さらに、反応条件(特にpH条件、緩衝剤となる塩の添加効果)を種々検討することで、触媒回転数を最大で2100,二酸化炭素還元の選択率を98%まで高めることに成功した。これらの値は、可視光照射下、かつ水溶液中で二酸化炭素還元反応を駆動した例では過去最高の値である。
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