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2018 年度 実績報告書

X染色体不活性化機構の解明に向けた人工染色体の活用

研究課題

研究課題/領域番号 17J03813
研究機関鳥取大学

研究代表者

稲岡 大悟  鳥取大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワードXist / LINE / CRISPR/Cas9
研究実績の概要

本研究では、X染色体不活性化現象に関連する因子として、染色体上に存在する繰り返し配列である長鎖散在反復配列(LINE)に注目している。当研究室では、染色体上の長大な領域の解析を可能にした人工染色体を用いて、①人工染色体の活用による染色体不活性化におけるLINE機能の解明および、②人工染色体上に集積する染色体不活性化因子群の網羅的回収技術である染色体免疫沈降(ChrIP)法の樹立を目指している。
本年度は、①人工染色体上にLINE配列が存在しない状況で、Xist non-coding RNAが不活性化能を持つか検討するために、Tet-ONシステムによる薬剤誘導型Xist遺伝子のみを搭載したマウス人工染色体(Xist-MAC)を保持するマウスES細胞の樹立を行った。樹立した細胞株における染色体不活性化現象を、マウス人工染色体上に搭載されたモニター遺伝子のmRNA発現量変化とヒストン修飾の変化によって確認したところ、抑制性のヒストン修飾の増加や、mRNA発現量の有意な低下が認められた。これらのことから、LINE配列は染色体不活性化において必須ではないことが示唆された。一方、②ChrIP法に利用するCRISPR/Cas9システムのマウス人工染色体に対する動作確認を実施した。マウス人工染色体上に存在する繰り返し配列mouse major satellitesを標的としたgRNAベクターを設計し、dCas9-mCherry融合タンパク質発現ベクターと細胞へ共導入することで、その機能性を確認した。共焦点顕微鏡を用いた蛍光観察により、細胞内に単一の蛍光シグナルが存在することを確認した。今後は、免疫蛍光染色-DNA FISH法により、マウス人工染色体上にdCas9タンパク質が集積していることを明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、①LINE配列の非存在下で、Xist ncRNAの不活性化能を検討するために、Tet-ONシステムによる薬剤誘導型Xist遺伝子を搭載したマウス人工染色体(MAC)を保持するマウスES細胞の樹立を行った。また、②ChrIP法に取り入れる技術であるCRISPR/Cas9システムが、MACに対して応用可能であるか検討した。
①CHO細胞内にて構築したMACを微小核細胞融合法によりマウスES細胞に移入し、核型解析および薬剤添加によるXist ncRNAの発現誘導確認により正常に移入されたクローンを選抜し、染色体不活性化の評価を実施した。MAC上に搭載されているモニター遺伝子であるEGFPとハイグロマイシンについて、mRNAの転写量(qPCR)とヒストン修飾の変化(ChIP)を検証したところ、ハイグロマイシン遺伝子については発現抑制を受けていることを示唆する結果を得た。しかし、EGFP遺伝子について、ChIPの結果では発現抑制傾向が認められたが、qPCRの結果では有意な差が認められなかった。EGFP遺伝子は強力なCAGプロモーターによって発現させられていることや、インシュレーターの一種であるHS4によって挟まれていることから、Xist ncRNAによる発現抑制を受けにくい環境にある可能性が示唆された。一方、②CRISPR/Cas9システムは、dCas9の発現量とgRNA配列の特異性が重要であることから、まず、蛍光によって追跡可能なdCas9-mCherry融合タンパク質を用いて条件検討を行った。マウスメジャーサテライトを標的としたgRNAベクターとdCas9-mCherry融合タンパク質発現ベクターをMAC保持ヒト細胞に共導入後24時間で蛍光観察したところ、細胞内に単一の蛍光シグナルを検出した。このことから、検出された単一の蛍光シグナルはMACを示していることが示唆された。

今後の研究の推進方策

②マウス人工染色体内のmouse major satellite領域へのdCas9の集積率が最も高くなるgRNAを選別するために、免疫蛍光染色-DNA FISH法により細胞内におけるdCas9とマウス人工染色体の局在性を明らかにする。これによって選別されたgRNAをレンチウイルスベクターに保持させることで、細胞への高効率な導入を目指す。また、ChrIP法の条件検討に向けて、dCas9ベクターを安定発現する細胞株を樹立する。dCas9安定発現株を用いてマウス人工染色体の免疫沈降に用いる細胞数や抗体量の最適化を行い、マウス人工染色体上に集積する複合体の回収を試みる。回収した複合体をSDS-PAGEにより精製後、LC-MS/MS解析により複合体を構成する因子群の同定をする。同定された因子について、これまでに報告がある因子を照らし合わせることで実験の整合性を示す。加えて、新規に同定された因子については、ノックダウン実験により染色体不活性化現象に関与しているか検証する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] X染色体不活性化機構の解明に向けた人工染色体の活用2018

    • 著者名/発表者名
      稲岡大悟
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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