研究実績の概要 |
私は今年度自身の研究課題「LHCの結果及び自然性問題が示唆するプランクスケール物理の解明」に関連して、2つの論文を発表した。 [1]ではヒッグス粒子がプランクスケール近傍で非自明なポテンシャルの形を持つことをモチベーションに、インフレーションの新たなモデルを考察した。一般に何らかのスカラー粒子(インフラトン)が高エネルギーで別の真空を持つ場合に、その粒子と重力との相互作用を考えることでインフレーションが高エネルギーの真空のまわりでも実現可能なことを示した。特に、インフレーション後にスカラーは低エネルギーの真空へと自然に落ちていくので、ヒッグス粒子をそのインフラトンとしても問題ない。場の理論を超えた様々な考察[2]より別の真空の存在は自然であると考えられており、我々の結果はそれらと矛盾しない。 続いて[2]では場の理論の繰り込み群に関する問題を考察した。一般に摂動論に基づく計算を行うと、有効作用にはlog(m2/μ2) (m:粒子の質量, μ:繰り込みスケール)を含む項が表れ、質量が複数ある場合には繰り込み群によるimprovementは難しいと考えられていた。我々はdecouplingに基づく議論を波動関数繰り込みも正しく扱うように定式化することで、それが可能であることを示した。結果として得られる有効作用は、これまでの不完全な議論から得られるものと定性的にはそれほど変わらないが、定量的には理論のパラメータ次第では大きく変わり得る点で重要である。 [1] Kiyoharu Kawana and Katsuta Sakai, Phys.Lett. B778 (2018) 60-63 [2] Satoshi Iso and Kiyoharu Kawana, accepted by JHEP
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