研究課題/領域番号 |
17J04061
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 慶幸 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 甲状腺 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
甲状腺濾胞細胞はターンオーバーが低く、遺伝子導入が可能かつ繰り返し継代可能で長期培養できる正常甲状腺培養方法がないことが、甲状腺発癌メカニズム等の解明の障壁となっていた。近年、腸において腸管を模倣した器官様構造体(オルガノイド)を作成する技術が確立された。オルガノイド培養法は幹細胞を維持しながらそこから分化した細胞も含めて器官様構造体を形成する。In vivo系における生理学的特性の再現と、In vitro系での操作の容易性とが両立でき、様々な臓器における発癌メカニズムを解明する上でも新たなモデルとして注目されている。今回、マウス甲状腺におけるオルガノイド培養法を樹立した。 1、樹立した正常甲状腺オルガノイドは高い細胞増殖能をもち、繰り返す継代と長期培養可能であった。また、オルガノイドは濾胞様構造を保ち、サイログロブリン合成、甲状腺刺激ホルモンによるヨウ素取り込み調整・甲状腺ホルモン合成と放出を認めた。甲状腺刺激ホルモンに依存してオルガノイドの増殖能が上がることが確認された。更に、in vitroで培養したオルガノイドを甲状腺機能低下マウスに移植すると甲状腺様の組織を形成し、ヨウ素取り込み能とサイログロブリン合成能をみとめた。 2、in vitroでは遺伝子導入が可能であり、p53ノックアウトの甲状腺オルガノイドにNRAS(Q61R)を高発現させて作成したオルガノイドを移植すると低分化癌の組織像を示した。甲状腺特異的なTTF-1は維持し、低分化な癌化によりThyroglobulinの発現は著明に低下していることが確認された。 樹立した甲状腺オルガノイド培養法は甲状腺癌を含む甲状腺疾患の研究の新しい有用なツールと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
甲状腺のオルガノイド作成に成功し、遺伝子導入による腫瘍オルガノイドの作成にも成功し、計画通り着実に研究成果を出している。また本研究に関する論文発表も行うことができ、期待以上の進展があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
我々が樹立した甲状腺オルガノイド培養法は甲状腺癌を含む甲状腺疾患の研究の新しい有用なツールと考えられた。他の臓器でのオルガノイドでは薬剤スクリーニング等による個別化治療や再生医療など臨床への橋渡し研究も期待されている。甲状腺においては治療前のI-131集積判定やin vitroでもin vivoにより近い状態での薬剤スクリーニング等にも期待がされる。今後は、我々が樹立した甲状腺オルガノイド培養法をもちいて利用ツールを検索していく予定である。
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