現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)小児四肢疼痛発作症の遺伝疫学的解析 全国の医療機関から小児四肢疼痛発作症疑い患者のリクルートを行い、遺伝解析を実施した。集積された35家系(合計75名、うち患者63名)のうち12家系でSCN11A遺伝子p.R222変異が陽性であった。このことから、疑い症例に対するp.R222変異スクリーニングの有効性が示唆された。p.R222変異陰性であった23家系について、SCN11A遺伝子のexon全体で変異を検索した結果、2家系で既報変異(V1184A, R225C)が検出され、また別の2家系で新規変異(F814C, F1146S)が見出された。一方で、本症に類似した症状を示すにも関わらずSCN11A変異が陰性である家系のうち、一部の症例について全ゲノムシークエンスを実施した。その結果、疼痛発症の原因遺伝子として知られているSCN9A, SCN10A遺伝子変異が各一例ずつ検出された。よって、網羅的な遺伝子検索は疼痛疾患の正確な鑑別に重要であると考えられる。 2)機能解析 2つの新規変異(F814C, F1146S)のノックインマウスを作成し、そのDRGニューロンの電気生理学的特性を解析した。その結果、これらの変異を持つマウスのDRGニューロンにおいては野生型マウスに比べ静止膜電位が優位に高く、発火頻度も上昇していることが示された。また、in vitro解析実施も検討しているが、Nav1.9の発現・機能にはβ1、β2サブユニットの共発現が重要な働きを担うことが既に報告されている(Lin Z et al., 2016)ため、本年度はβ1、β2サブユニットの安定発現細胞株作成を開始した。発現ベクターの作成を行い、細胞への遺伝子導入を行った。安定発現細胞株の候補クローン選定のため、β1、β2サブユニットの免疫蛍光染色およびウェスタンブロット法により、タンパク発現の有無を確認中である。
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