前年度までの研究活動において、スウェーデン王立工科大学(KTH)における回転平面クエット流に関する実験を予定通り終了しているので、今年度は同実験により取得した多量の実験データの整理・解析を行なうとともに、大阪大学サイバーメディアセンターのスーパーコンピュータを用いた大規模計算により、回転の無いニュートン流体乱流における非線形マルチスケール相互作用に関する数値解析を引き続き行った。 まず、KTHにおける実験により取得した実験データの解析に関しては、これまでの研究により確立した解析法を用いることで、流れ場に生じる大規模な渦構造と小さな乱流構造の間に生じる相互作用が運動量やエネルギーの輸送に影響を与えるメカニズムを明らかにした。また、粘弾性回転平面クエット流の実験では、前年度取得した可視化実験・ステレオP I V計測の結果を解析したところ、粘弾性には縦渦構造を安定化させ、さらなる不安定性の出現を抑制する事が明らかになった一方、レイノルズ数・回転数・界面活性剤濃度の条件によってはニュートン流体の場合には見られない特殊な不安定性が生じることも明らかになった。 また、大規模計算によるニュートン流体壁乱流中のマルチスケール相互作用に関する数値解析では、計算領域をあえて小さくした数値解析を行うことにより、大・小スケール間のエネルギー輸送がどの様な渦構造のダイナミクスにより生じるのかを詳しく調べた。その結果、乱流エネエルギーの準カスケード(大きいスケールから小さいスケールへのエネルギー輸送)と逆カスケードはそれぞれ「自己維持サイクル(self-sustaining cycle)」と呼ばれる乱流の維持機構が伴う「ストリーク不安定性」と「主流方向縦渦の再生成」に対応する事が明らかになった。
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