研究課題
インフルエンザウイルスは、HAのシアル酸結合によって細胞に感染すると考えられている。しかし、近年分離されたH3N2季節性ウイルスのHAは赤血球凝集活性が低下し、NAはシアル酸を介して赤血球凝集することが示唆されている。そこで、HAの赤血球凝集活性が著しく低下したH3N2季節性ウイルス[A/Tokyo/UT-IMS2-1/2014(H3N2) (Tokyo2と略す)]と、HAの赤血球凝集活性が低下していないH3N2季節性ウイルス[A/Hong Kong/1/68(H3N2) (HK68と略す)]のNAの性質を比較し、NAによるウイルス感染への影響を明らかにする。HAがTokyo2由来でNAがHK68由来のウイルス(Tokyo2HA/HK68NA)の感染効率は、AX4細胞では、HAおよびNAがTokyo2由来のウイルス(Tokyo2HA/Tokyo2NA)と同程度であった。しかし、Tokyo2HA/HK68NAの感染効率は、分化した正常ヒト気管上皮細胞では、Tokyo2HA/Tokyo2NAよりも顕著に低かった。このことから、赤血球凝集活性の低下したHAを持つH3N2ウイルスが、ヒト気管細胞に効率よく感染するためには、シアリダーゼ活性の低いNAが必要である可能性が示唆された。また、HAの膜融合活性を残したままシアル酸結合活性を不活化した変異HA(Tokyo2由来)と、Tokyo2由来のNAを持つウイルスの感染性を評価したところ、ウイルスの細胞内侵入が見られなかった。このことから、ウイルス感染成立には、Tokyo2のNAのシアル酸結合活性だけでは不十分であり、HAのシアル酸結合活性も必要であることが示唆された。本研究によって、H3N2季節性ウイルスが効率よく感染するためには、HAとNAの機能的なバランスが重要であることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Nature Microbiology
巻: 4 ページ: 1268~1273
https://doi.org/10.1038/s41564-019-0433-6
Journal of General Virology
巻: 100 ページ: 1345~1349
https://doi.org/10.1099/jgv.0.001314
巻: 5 ページ: 27~33
https://doi.org/10.1038/s41564-019-0609-0