研究実績の概要 |
本研究は魅力知覚における無自覚的・自覚的視覚情報処理の認知神経科学的メカニズムについて知覚心理学と神経科学の両面から検討することを目的とする。本年度は主に以下の3つの研究課題に取り組んだ。 研究1 (高速逐次視覚提示法を用いた魅力顔への自動的注意捕捉の研究):視覚入力された顔情報から魅力が知覚されるまでの注意過程について高速逐次視覚提示法を用いて検討した。その結果,顔魅力は顕在的に評価することが求められていなくても即時的に評価され,魅力顔は自動的に注意を捕捉することが明らかになった。こうした研究成果は査読付き論文として国際誌に掲載された他 (Nakamura, Arai, & Kawabata, 2017),魅力研究における高速逐次視覚提示法の利用可能性についての総説が査読なし国内誌に掲載された。 研究2 (連続フラッシュ抑制法を用いた顔魅力の無自覚的視覚処理過程の研究):閾下刺激提示法の1つである連続フラッシュ抑制法を用いて,顔の意識的知覚に先行する無自覚的過程における魅力知覚の特性について検討した。その結果,顔魅力は顔の意識的知覚に先行して処理されていることが知覚心理学実験と脳波計測実験の両方から示唆された。これらの研究成果については,査読付き国際誌に投稿し,現在原稿修正中である (Nakamura & Kawabata, in review)。 研究3 (計算モデリングによる顔魅力規定要因の研究):顔の意識的知覚に基づいて評価される顔魅力がどのような顔特徴によって規定されているかを明らかにするために,計算モデリングを導入した印象評価研究を行った。その結果,顔魅力を規定する多様な顔特徴を特定し,顔魅力を定量的に操作した顔画像を生成する技術を確立することができた。一連の成果は複数の国内の学会で発表し,日本基礎心理学会での発表に対しては優秀発表賞が授与された。
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