研究課題/領域番号 |
17J04145
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米田 浩基 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | ガンマ線検出器 / コンプトンカメラ / 電子飛跡検出 / ガンマ線連星 / 中性子星 |
研究実績の概要 |
当年度、MeVガンマ線宇宙物理学において、重要なサイエンスターゲットであるガンマ線連星の解析を進めた。ガンマ線連星は、X線からTeVガンマ線にかけて、非熱的放射を起こし、これまでに、6つ見つかってきた。しかし、1天体を除いて、コンパクト星が中性子星なのかブラックホールなのかは判明しておらず、非熱的放射を起こす放射機構が大きな謎になっている。そこで、コンパクト星の正体を明らかにするために、軌道周期が約3.9日と短く、これまで軌道周期全体に渡って観測がよくされてきた LS 5039 をターゲットとし、X 線帯域での周期解析を行い、中性子星を含むか検証を行った。X 線衛星「すざく」とNuSTAR 衛星を用いて、硬X線帯域で周期解析を行ったところ、約9秒周期のパルス成分を発見した。以上の内容について、国内学会において発表を行った。 また、昨年度に実証した電子飛跡型半導体コンプトンカメラについて、2030年代に予定している半導体コンプトンカメラによるMeVガンマ線観測計画などにインパクトを与えると考え、高エネルギー宇宙物理学の国際会議での発表を行った。 また、7月から10月、11月から12月にかけて、それぞれドイツのMax Planck Institute for Nuclear Physics、アメリカのYale Universityに滞在し、高温プラズマからの核ガンマ線のラインプロファイルのモデリング計算の研究を開始した。その結果、陽子温度に対して原子核温度が大きく高い場合、ラインのガウシアンからの逸脱が顕著になることがわかり、ブラックホールへの質量降着現象などにおいて、粒子温度を測定するプローブになることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガンマ線連星の解析では、約9秒周期のパルス成分を発見し、これが本当であれば、ガンマ線連星 LS 5039が初めて中性子星であることを明らかにできたことになる。さらに、この周期は、マグネターの典型的な値で、マグネターの放射機構に新たな観点から制限を加える可能性があり、論文準備できる段階まで進んでいる。 電子飛跡型半導体コンプトンカメラを発表した国際会議では、交流したヨーロッパの研究者に、自身の研究室に来ていただけるなど、これまでの成果を対外に伝えることが一定レベルできたと考えている。また、深層学習の一種の畳み込みニューラルネットワークの手法を用いて、飛跡解析が可能か検証し始めたところ、有効であることが確認できており、検出器開発から解析手法まで一貫した開発の完成に向けて研究を進められている。 高温プラズマからの核ガンマ線のラインプロファイルのモデリング計算の研究では、自身が検出器開発を進めているMeVガンマ線宇宙物理学を、理論面から推進する意義を持っており、論文を準備できる段階まで来た。海外派遣を通して、新たな研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
ガンマ線連星の解析では、すざく・NuSTAR衛星の解析をより詳細に詰めた上でさらに必要な観測時間を見積もり、NuSTAR衛星の長期観測提案を行うことを考えている。また、Fermi衛星やHESS望遠鏡などを用いて、より高エネルギーでの解析を行い、パルス放射の機構に制限を加えることも計画している。 電子飛跡型半導体コンプトンカメラでは、初の技術実証の論文を出すために必要なデータの取得と解析を行う。また、畳み込みニューラルネットワークによる解析コードのプロトタイプを改良することも進めたい。 高温プラズマからの核ガンマ線のラインプロファイルのモデリング計算の研究では、論文を発表し、この基礎的な研究を具体的な天体へ応用できないか議論を重ねていく。
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