研究課題/領域番号 |
17J04148
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
林 正幸 琉球大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 社会的学習 / 情報伝達 / 共生 / 相互作用 / 認識機構 / アリ / アブラムシ / 炭化水素 |
研究実績の概要 |
アリはアブラムシなどの甘露排出昆虫と共生関係を築く。近年の研究により、アリのパートナー認識は学習が基盤にあることがわかってきた。アリはアブラムシから甘露をもらった経験により、その種に対して共生的な振る舞いを示すようになる。さらに、アリはアブラムシに直接随伴した経験がなくとも、アブラムシに随伴していた巣仲間と接触することで同様の行動変化がみられ、巣仲間のあいだでパートナーの情報が伝達していると考えられる。本研究の目的は、この情報伝達のメカニズムを明らかにするとともに、アリ社会内における情報共有がアリとアブラムシ双方に与える影響を評価することである。初年度である29年度は、アリのアブラムシ認識因子を探求するとともに、アリがどのようにして巣仲間他個体へと情報を伝達するのかを検証した。 これまでの研究により、アリはアブラムシの体表炭化水素(CHC)を用いてパートナー種を識別していることがわかっていたが、CHC中のどの成分が認識因子の役割を担っているかは不明であった。そこで、マメアブラムシCHC中の直鎖アルカンと分枝アルカンを分画し、それぞれの成分群を塗布したダミーをアブラムシ経験アリに提示し行動反応を比較した。その結果、アリはアブラムシCHC中の分枝アルカン群をおもに用いてパートナー種を識別していることが判明した。 アブラムシに随伴していたアリから未経験アリへの情報伝達がどのように生じているかを明らかにするため、アリの口移し行動(栄養交換)に着目し実験を行った。経験アリから未経験アリへの口移しを実験的に遮断したところ、未経験アリのアブラムシに対する攻撃性が顕著に増加した。これはアリの情報伝達が口移し時に生じていることを強く示唆しており、補足的に実施した他の実験においても本説を支持する結果が得られた。今後は、口移しの際にどのような情報物質が伝達しているかを調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
難航すると思われた操作実験が順調に進行し、当初予測されたとおりに、情報伝達が口移し時に生じていることを示唆するデータが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
口移し時に情報伝達が生じていることがわかったため、今後は具体的な情報物質が何であるか検証していきたい。
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