研究課題/領域番号 |
17J04163
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小山 健斗 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | サルモネラ / 確率 / 食中毒 / 予測 |
研究実績の概要 |
本研究では食品の品質と殺菌効果とを両立させる安全性理論の構築を目的とする。少数の細菌で食中毒を引き起こす腸管出血性大腸菌とサルモネラを用いる。対象とする細菌集団が完全に死滅する時間を確率分布で表記し,細菌集団の死滅条件を確率に裏付けられた方法で設定する。例えば,「〇〇°C△△分以上加熱殺菌した場合,サルモネラ10万個は99.99%の確率で完全に死滅する。」といった殺菌条件を提示する。確率論に裏付けされた殺菌条件に加え,食品の品質と安全性のバランスを考える。確率論の知見に基づき品質劣化を最小限に抑えつつ,安全面も許容レベルにできるといった殺菌効果と品質保持の両面における最適化を可能とする殺菌条件を提示する。新たな安全性評価理論の構築により,実際の殺菌工程における殺菌条件の設定において,“どの程度の確率で対象とする細菌集団が完全に死滅したか?”といった製造業者やリスク評価者の関心事への回答を可能とする。これまでの研究としては,液体培地などを用い,サルモネラと腸管出血性大腸菌の加熱殺菌による細菌死滅時間の確率予測モデルを構築した。殺菌条件は50°Cから70°Cの範囲で5条件,複数の汚染レベルを設定し,細菌の死滅時間を確率分布で評価し比較検討した。更に,従来の化学工学的な根拠に基づく決定論的な細菌死滅の評価手法を見直し,確率論的に安全を保証した殺菌時間の設定を行った。具体的には,「〇〇°C△△分以上加熱殺菌した場合,サルモネラ10万個は99.99%の確率で完全に死滅する。」といった殺菌条件を提示した。また,10月からはギリシャに渡航し,Aristotle University of Thessalonikiで共同研究を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基本となる加熱殺菌における細菌集団死滅確率評価の実験系を構築した。加熱殺菌で複数の温度帯で細菌集団の死滅確率を求められた。従来の殺菌指標との比較を行っている。簡易的に従来の殺菌評価との比較を行えた。本年度は細菌挙動の確率過程モデルの作成,コンピュータシミュレーションの基になる部分を構築した。そのため,来年につながる結果となった。現在投稿論文を作成中であり,今年度の研究をまとめることできた。また,予定通りに,Aristotle University of Thessalonikiとの共同研究も進んだ。本研究での実験系を基に今後,理論,コンピュータ・シミュレーションを作成していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に作成するモデル系を用いて,実施の食品系での微生物学的安全評価手法の適応可能性を検討する。具体的には,低温殺菌を前提とする業務用加工液卵や牛乳などの液状食品の殺菌を行う。モデル系と同様に複数の汚染レベルと殺菌温度を設定し,細菌集団の死滅時間を確率分布として評価する。食品においては種々の成分(タンパク質,脂質など)の影響を細菌が受けることから,開発した予測モデルにさらに食品の影響要因を組み込む必要がある。モデル系と同様に食品での実験において確率的に保証された殺菌条件を算出し,従来の殺菌条件と比較検討する。平成29年度に引き続きギリシャでの共同研究を行う。食品系においても,顕微鏡及びコンピュータ・シミュレーションからのアプローチを行い,多角的に細菌集団の死滅時間の予測を行う。
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