本研究では食品の品質と殺菌効果とを両立させる安全性理論の構築を目的とする。少数の細菌で食中毒を引き起こす腸管出血性大腸菌とサルモネラを用いる。対象とする細菌集団が完全に死滅する時間を確率分布で表記し,細菌集団の死滅条件を確率に裏付けられた方法で設定する。例えば,「〇〇°C△△分以上加熱殺菌した場合,サルモネラ10万個は99.99%の確率で完全に死滅する。」といった殺菌条件を提示する。確率論に裏付けされた殺菌条件に加え,食品の品質と安全性のバランスを考える。確率論の知見に基づき品質劣化を最小限に抑えつつ,安全面も許容レベルにできるといった殺菌効果と品質保持の両面における最適化を可能とする殺菌条件を提示する。新たな安全性評価理論の構築により,実際の殺菌工程における殺菌条件の設定において,“どの程度の確率で対象とする細菌集団が完全に死滅したか?”といった製造業者やリスク評価者の関心事への回答を可能とする。今年度は,サルモネラの死滅・及び増殖をベイズ統計モデルによって解析した。滞在先のギリシャでのディスカッションの結果,不確実性を考慮したモデルづくりに着手することになった。国際共同論文の作成にいたり現在論文を2報投稿中である。今後も共同研究を引き続き行っていき,食品の品質と殺菌効果を両立させる安全性理論について研究を進めていく。
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