X線天文衛星ひとみに搭載された軟ガンマ線検出器(SGD)を用いて,宇宙の非熱的現象を解明することを目的として研究を進めてきた.本年度は,SGDにより唯一観測された天体であるかに星雲の観測結果の解析し天体からの偏光を捉え,その偏光に関する研究を行った. ひとみ衛星(ASTRO-H)に搭載された軟ガンマ線検出器(Soft Gamma-ray Detector; SGD)の解析は昨年度末に終了し,解析結果に関する議論が進められた.解析の結果は,60-160キロ電子ボルトにおいてかに星雲のシンクロトロン放射で輝くトーラスがおよそ22%偏光していることがわかった.この結果は,過去に行われた別のX線ガンマ線観測結果と比較した時,矛盾のない結果であった.これらの観測結果から,エネルギーが高くると同時に偏光度が高くなる様子がみられた.そこで,かに星雲での偏光度に関するモデル化を行った. かに星雲はその中心にあるパルサーから電子陽電子がパルサー風として流れ込み磁場と相互作用することでシンクロトロン放射で輝いている.本研究ではシンクロトロン放射による偏光を再現するため,磁気流体力学を考慮したパルサー風星雲内での流体モデルと電子の冷却を考慮した電子のエネルギー分布の変化を組み合わせて計算した.さらに流体が相対論的に動く様子も取り組み解析的に計算を行った.モデルの計算結果は観測結果よりも高い偏光度が得られ,新たな課題を提示した. 以上の研究結果のうちSGDによる観測結果は論文として出版され,全体の内容を高宇連の研究会で発表した.また,モデルの部分も論文としてまとめている.
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