研究課題
軟X線は,X線の中で比較的長い波長(0.5 nm~10 nm)を持つ電磁波である.軟X線は,その帯域に軽元素のK吸収端や金属元素のL吸収端が多く存在し,物質の結晶構造,化学組成,電子状態,磁気構造を解析するうえで欠かせない.軟X線解析を行う際には集光素子を用いてビームを集約することが一般的である.集光素子の性能,即ち集光サイズやピーク強度,色収差の有無は,解析における空間分解能,感度,波長可変性に直結する.軟X線の理想的な集光素子として,回転楕円ミラーが提案され,その作製プロセス及び集光システムの開発が進められてきた.軟X線ビームラインにおける回転楕円ミラーの集光性能の評価を続ける中で,3点の課題が明らかになった.第一に,ミラー中央部を通過する光のために利用効率が高くならないこと.第二に,ミラーの設置角度精度が0.1 μradと極端に厳しいこと.第三に,作製の過程で回転楕円ミラーの中心軸が弓状に撓むことである.これら課題に応えるために,リング集光ミラーと準ウォルターミラーからなる二段集光光学系(Motoyama, 2015)を設計した.リング集光ミラーの導入により第一の課題が解決し,回転楕円ミラーを準ウォルターミラーに変更することにより第二,第三の課題が解消された.本光学系を検証するために,SPrin-8の軟X線ビームラインBL25SUにおいて集光実験を実施した.300 eVにおいて,鉛直・水平ともに200 nmの集光サイズと45%の利用効率が達成され,これらはミラーを用いた軟X線集光において画期的な値である.また,タイコグラフィ法に基づく波面計測を実施することで,ミラーの形状誤差を定量的に評価した.構築した光学系の応用例として,タイコグラフィ法を用いたPt/Co薄膜試料の磁区観察を実施し,Line and Spaceで100 nmの分解能が確認された.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Applied Physics Letters
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10.1063/1.5144932
Journal of Synchrotron Radiation
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