研究課題/領域番号 |
17J04232
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
北 直樹 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 情報ハイディング / 視覚復号型秘密分散法 / コンピュータグラフィックス |
研究実績の概要 |
複数枚の画像を重ね合わせることで複数の秘密画像あるいは秘密情報が復元可能かつ秘密分散法の要請を満たす新規的なパターン生成手法を確立するという目的のもと研究を行い、1件の国際学会ポスター発表を行った。また成果の一部は国際学会での口頭発表を行い、国際論文誌へも採録されている。 今年度は、人間の視覚認知の基づく離散的エレメントの配置パターンについて、国際学会でポスター発表を行い、Excellent Poster Award を受賞した。本成果はこれまでの研究成果をまとめ、人間の視覚認知に基づくレイアウトについて今後の研究の方向性を議論するものである。 また、コモン・シェアを用いた(k,n)-EVCS手法の開発を行った。これは申請書に記載した研究目的を達成するためのコアとなる手法である。提案手法では、コモン・シェアと他のシェアを重ね合わせることで秘密画像が復元できる。特にコモン・シェアと重ね合わせるシェアによって異なる秘密画像を復元することができる点が本手法の特徴である。また提案手法は2値画像だけでなく、グレースケール画像やカラー画像にも適用することができる汎用性の高い手法となっている。さらに、シェア画像のドットパターンの配置を最適化することで品質を向上させることに成功した。加えて、提案手法で生成したシェア画像を一般的な商用プリンタで透明シート上にプリントし、物理的に重ね合わせることで秘密画像が復元されることを実証した。本成果は国際会議で発表を行い、国際論文誌へも採録されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では研究課題に対して3つの段階を設定し、各段階的ごとに成果を発表することを予定していた。第1段階では、ランダムなドットパターンを対象とした複数の秘密隠蔽が可能な手法、第2段階では画像等の構造化されたパターンを対象とした手法、そして第3段階では第1段階および第2段階で確立された手法の応用としてWebログイン認証に適用し、検証を行うという計画であった。 そしてこれまでに第2段階までの内容を含む手法を確立し、対外的に発表を行った。計画では二次元コードへの隠蔽を想定していたが、提案手法は画像全般に対応しており、より汎用性の高い手法を提案することができた。研究課題としても掲げているように、人間の視覚認知に基づくパターンを構成するため、画像の品質を評価する指標を用いて提案手法の有効性を検証した。 以上のことから、複数枚の画像を重ね合わせることで複数の秘密画像あるいは秘密情報が復元可能かつ秘密分散法の要請を満たす新規的なパターン生成手法を確立するという研究目的に対して一定の成果が得られており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
計画では研究課題に対して3つの段階を設定し、各段階ごとに成果を発表することを予定していた。しかしながら、今年度は第1段階および第2段階に相当する成果をまとめて提案・発表した。そして第3段階目では、今回得られた成果を実際のWebログイン認証へ応用することで提案手法を検証する計画であった。しかし研究を進める過程で、よりエンタテインメントへの応用を指向することが提案手法の有効性、潜在的な応用可能性を示すうえで効果があると判断した。よって今後は、実際に物理的に組み合わせ、重ね合わせることで所望の秘密を復元することが可能な手法の研究開発を行うこと予定している。さらに、今回は一般的なインクジェットプリンタを用いて提案手法による生成パターンの実製作を行ったが、今後は他の素材や手段を利用した実製作も行う予定である。
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