「あかつき」電波掩蔽観測のデータを解析することで、金星雲層より上の気温分布の地方時依存性に着目して鉛直伝播する熱潮汐波の微細構造を明らかにした。観測結果と数値シミュレーションは互いに整合的であり、熱潮汐波が大気の運動にもたらす影響を理論的に考察した。また、熱潮汐波の構造から金星雲層より上の東西風速を推定できることを示唆した。これらの研究成果は論文としてまとめられ、Journal of Geophysical Researchに掲載された。 一方、金星雲層より下に伝播する熱潮汐波の構造も徐々に捉えつつあり、試験的ではあるが観測結果と数値シミュレーションを比較したところ、両者は定性的に整合している。金星雲層より下に伝播する熱潮汐波は金星大気スーパーローテーションの成因として有力視されているため、今後の解析によって成因を解明できると期待する。近年の金星大気大循環モデルを用いた理論的研究と比較することによって、この熱潮汐波理論の検証を定量的に実施したい。加えて、Venus Expressと「あかつき」の電波掩蔽観測の結果と組み合わせて、金星雲層より下の熱構造について初めて統計的に調べることができた。金星雲層より下の気温分布と安定度分布は従来の光学機器による観測では分からないため、本研究結果は新しい金星大気標準モデルの構築につながる。なお、この研究成果については、現在Nature Geoscienceにて査読中である。
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