本研究では、ゲノム多型情報を用いて、ミヤコグサ種内に生じつつある共生特異性の遺伝的分化を検出し、その進化プロセスを理解することを目的としている。2017年度はミヤコグサが各自生地で共生している根粒菌相を明らかにするために、実際に自生地に赴き、各地でどのような根粒菌と共生しているのかを調査した。調査は宮古島から北海道にわたる14地点にて行われ、合計104株の根粒菌を採取した。採取した根粒菌は3つのハウスキーピング遺伝子と4つの共生遺伝子の塩基配列を用いて遺伝子型を決定した。ハウスキーピング遺伝子を用いた系統解析の結果、ミヤコグサは、Mesorhizobium属内で非常に多様な系統と共生関係を築いていることが明らかとなった。一方で、ミヤコグサに共生する多様なMesorhizobium属根粒菌のすべてが、非常に類似した共生遺伝子を持っていた。ハウスキーピング遺伝子と共生遺伝子を比較すると、共生遺伝子では同義置換サイトおよび非同義置換サイトの両方で多様性が低下しており、またGC含量においても低下していた。これらのことから、多様なMesorhizobium属根粒菌がミヤコグサとの共生に必要な共生遺伝子を水平伝播によって獲得したことが示唆される。また、ハウスキーピング遺伝子と共生遺伝子の両方において、同じ遺伝子型が複数地点より採取されることはほとんどなく、系統関係と採取地域の間に明確な相関は見れらなかった。さらに、AMOVA解析においても集団間でハプロタイプの分布に有意な差があることが明らかとなった。これらのことから、ミヤコグサは各生息地で異なる遺伝子型をもつ根粒菌と共生していることが明らかとなった。
|