研究課題
本研究では,ゲノム多型情報を用いて,ミヤコグサ種内に生じつつある共生特異性の遺伝的分化を検出し,その進化プロセスを理解することを目的としている。2019年度は,野生環境下でミヤコグサと共生していた根粒菌9株とミヤコグサ野生系統15系統を用いた135セットの組合せによる接種実験と,根粒菌株の全ゲノム解析を行い,ミヤコグサー根粒菌共生関係に関連する根粒菌ゲノム領域の特定を試みた。接種実験より,ミヤコグサの表現型(地上部の成長量および根粒形成)は,ミヤコグサ系統の影響,根粒菌系統の影響,および両者の交互作用が有意に検出された。しかし,ミヤコグサと根粒菌の共生関係において,同一地域より採取された組合せで成長が良くなるなど,いわゆる局所適応的な相互作用は検出されなかった。また,根粒菌全ゲノム解析の結果より,ミヤコグサ根粒菌において従来共生関係に関連することが報告されていたゲノミックアイランド(共生アイランド)が,異なる根粒菌間で頻繁に水平伝播していることが示された。そして,接種実験の結果と根粒菌全ゲノム解析の結果を組み合わせることで,ミヤコグサの成長に関連する根粒菌ゲノム領域は,共生アイランドだけでなく,根粒菌コアゲノム領域にも存在することが示唆された。これらの結果から,ミヤコグサ-根粒菌共生関係において,根粒菌共生アイランドが異なる根粒菌へ水平伝播することで,各土壌中で植物への生育に影響する根粒菌ゲノム領域の多様性が維持され,局所適応的な関係の固定が妨げられているのではないかと考えられる。このような植物と根粒菌の共生関係の進化過程を理解するために,今後は植物側の遺伝解析が求められる。そのため,現在ミヤコグサ135系統と根粒菌2株を用いた接種実験とゲノムワイド関連解析を進め,ミヤコグサ-根粒菌共生関係の分化を司る植物側遺伝基盤の特定を試みている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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BioRxiv
巻: 2020.03.08.983007 ページ: 1~62
https://doi.org/10.1101/2020.03.08.983007
Molecular Plant-Microbe Interactions
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https://doi.org/10.1094/MPMI-02-19-0039-R
http://www.s.chiba-u.ac.jp/pr/files/tutimatu20190726.pdf