本年度はリョウブ葉内、根内内生菌叢の季節変化と元素濃度について調べ、他樹種としてタカノツメとの比較を行った。結果として、リョウブ葉内では5月に優占した種が7月以降は消え、他の種が優占した。落葉前の11月は夏期に優占した種以外の種も多く出現していた。夏期に優占した種は重金属耐性が確認された種だった。一方で、タカノツメ葉内内生菌は季節ごとの明確な優占パターンは確認できなかった。根の内生菌叢については、リョウブで5-7月は共通する4種が優占する傾向があった。11月には5-7月と共通する1種の他、異なる2種が出現し、3種が優占する傾向があった。タカノツメ根では特定の1種が1年優占する傾向があり、リョウブ根11月の優占種と共通していた。重金属濃度についてはリョウブ葉内でタカノツメに比べCo濃度が20倍、Mn濃度が3倍高かった。また、リョウブのCo、Mn濃度は秋にかけて高濃度になる傾向が確認された。重金属耐性種が優占したのは、葉内のCo、Mn濃度が影響した可能性がある。 また、接種試験として2種類の実験を行った。葉内内生菌の接種試験では、重金属耐性が確認された内生菌を無菌幼植物体に接種し、Co処理を行った場合に重金属集積に影響するかを調べた。結果としては、非接種区と接種区で成長や各器官重金属濃度に明確な影響は確認されなかった。 根内内生菌の接種試験では、Co、Niを集積させた幼植物体に蛇紋岩土壌区、名大土壌区の土壌抽出物を接種し、非接種区との比較により重金属集積の違いが内生菌に与える影響を調べた。結果として、Ni処理名大区のリョウブでのみ他条件よりも成長増加が確認された。また、重金属濃度に他区との違いは確認できなかったが、K、P濃度が低かった。これらから内生菌の養分吸収によらない補助成長促進効作用が確認され、集積した重金属によって内生菌叢を調整し、成長を補助している可能性が示唆された。
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