研究課題/領域番号 |
17J04330
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀口 達也 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
キーワード | ヘッセンバーグ多様体 / 旗多様体 / シューベルト多項式 |
研究実績の概要 |
ヘッセンバーグ多様体は旗多様体の部分多様体であり,そのトポロジーは他分野と関連していることが知られている.今年度は「正則半単純」と「正則冪零」と呼ばれるヘッセンバーグ多様体の二つのクラスについて以下の研究を行った. (1)正則な半単純ヘッセンバーグ多様体の体積多項式の性質 正則な半単純ヘッセンバーグ多様体は旗多様体とpermutohedral variety(Weyl chambersを扇とするトーリック多様体)を繋ぐ滑らかな射影多様体である.今年度の研究において,正則な半単純ヘッセンバーグ多様体の体積多項式を単純ルートの多項式で表したときに現れる係数が非負であるという結果が得られた.本研究は原田芽ぐみ氏,枡田幹也氏,Seonjeong Park氏との共同研究である. (2)正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環とシューベルト多項式の関係 正則な冪零ヘッセンバーグ多様体は旗多様体とPeterson variety(旗多様体の量子コホモロジーと関連するもの)を繋ぐ射影多様体であり,一般に特異点を持つ.以前得られた結果である正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環の明示的表示,多項式環を具体的な多項式で生成されるイデアルで割った剰余環としての記述,に現れる具体的な多項式(コホモロジーにおける関係式)をシューベルト多項式で書くと,どのように表されるかという問題について取り組んだ.その結果,この多項式はあるシューベルト多項式たちの交代和に一致するという等式が得られた.さらに,与えられた正則な冪零ヘッセンバーグ多様体において余次元1の正則な冪零ヘッセンバーグ多様体を考えることにより,この等式の幾何学的な解釈も与えた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により,正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環の環構造の理解が徐々に深まってきた.実際,正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環の明示的表示,すなわち多項式を具体的な多項式で生成されるイデアルで割った表示が得られ(阿部拓氏,原田芽ぐみ氏,枡田幹也氏との共同研究),さらにそのコホモロジー環が超平面配置の言葉を用いて記述できるという結果が得られた(阿部拓郎氏,枡田幹也氏,村井聡氏,佐藤敬志氏との共同研究). 一方で,正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環のベクトル空間としての基底を与える問題については未だ解明されていない(Harada-Tymoczkoにより予想は立てられている).正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環における関係式を定める多項式がシューベルト多項式の交代和で書けるという今年度得られた結果を用いることで,Harada-Tymoczko予想の解決に繋がると期待している.
|
今後の研究の推進方策 |
正則な冪零ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環の基底に関するHarada-Tymoczko予想に取り組む.さらにそこから正則な冪零ヘッセンバーグ多様体上のシューベルトカルキュラスの研究についても行う. 正則な半単純ヘッセンバーグ多様体については,コホモロジー環の明示的表示が未だ解明されていないため,この問題についても取り組む.Tymoczkoにより構成された正則な半単純ヘッセンバーグ多様体のコホモロジーの上の対称群の表現はグラフ理論における彩色対称関数と綺麗な対応があることが知られている.この対応を用いて,正則な半単純ヘッセンバーグ多様体のコホモロジー環の明示的表示を与えることにより,グラフ理論における彩色対称関数に関するStanley-Stembridge予想についても取り組みたい.
|