前年度までの研究で、エキゾチックハドロンの内部構造をモデル非依存に決定するには、実験データの詳細な解析から状態近傍のエネルギー領域の散乱振幅を精密に決定する必要があることが明らかになった。そこで今年度は、二体散乱振幅を実験データからモデルによらずに決定する手法について研究した。 本研究では、エキゾチックハドロンの候補である Lambda(1405) バリオンが現れる KbarN 系に着目し、閾値近傍の散乱振幅をモデル非依存に決定する方法を研究した。閾値近傍の KbarN 系の解析では、アイソスピン対称性の破れによる K^-p チャネルと K0barn チャネルの閾値エネルギーの差を取り入れることが重要である。そこで、K行列理論を拡張しアイソスピンの破れの効果を取り入れつつ、最も一般的な散乱振幅を用いた解析方法を構築した。 既存のモデルを用いて生成した KbarnN 散乱の擬似データの解析から、既存の実験データdで得られている KbarN 散乱断面積と K^-p 散乱長の測定精度をあげるのみでは Lambda(1405) の構造を特定するに十分な振幅の決定はできないことを示した。さらに散乱振幅の位相の情報や Lambda(1405) の量子数とはことなるチャネルであるアイソスピン1のチャネル実験データが振幅の詳細な決定に重要になる可能性を示した。 これらの研究成果を、国内・国際研究会および国際サマースクールにて発表した。
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