研究実績の概要 |
本研究で最も重要なマイクロポンプの設計について、従来型の1対の電極で駆動する方式の電気浸透流ポンプの駆動を確認し、電気浸透流に必要な流路側面の表面電位(ゼータ電位)がシリコン基板を利用した場合でも十分に取れていることを確認できた。また、高電圧回路については、DRIEによるメサ絶縁を5V標準CMOSトランジスタに適用することで 30Vの動作を行うことができた。従来のメサ絶縁トランジスタを利用した高電圧スイッチング回路の研究では、スイッチングに必要な電圧操作は外部回路を利用して行っていた。今回の研究により、同じくメサ絶縁を利用した回路を前段に用いることで、所定の電圧と5 Vのクロック信号を入力するだけでスイッチングが行えるようになり、集積化に成功した。また、このメサ絶縁トランジスタを利用した昇圧回路の作製にも成功した。これは、従来のCMOS回路では絶縁破壊がトランジスタのドレイン端子と基板間で起きてしまうため、30Vが上限であった。そこで、メサ絶縁を利用して物理的に素子間を絶縁することで、それ以上の電圧に耐えられるようにした。また、素子間が絶縁されたことで個々のトランジスタ全てにおいてボディ・ソース間電位が0となり、昇圧効率を悪化させる原因となっていた、基板バイアス効果によりしきい値上昇を失くし高効率化が図れ、6個のトランジスタによる昇圧回路で29.8 V, 10個のトランジスタによる昇圧回路で49.2 V, 20個のトランジスタによる昇圧回路で95.4 Vの出力を行うことに成功した。さらに、作製した昇圧回路を利用して、1対電極型のマイクロポンプの駆動にも成功し、実際にマイクロポンプ駆動向け回路として利用できることを実証した。
|