研究実績の概要 |
本課題は,認知エフォートの意図的制御が注意を構成する3つの機能(警戒,定位,実行制御)及びその下位成分に及ぼす影響を検証することを目的とする。その認知エフォートの意図的制御に関して,課題遂行時における二つの認知方略に着目した。一つが,従来の研究で暗黙の前提としていた最大限のエフォートを投じ,課題成績を最大限に引き上げる戦略である。もう一つが,エフォートの投資を最小限に(節約)する戦略である(Irons & Leber, 2016)。段階的に研究を進めており,H30年度は以下の二つのプロジェクトを実施した。一つは,前年度の行動実験を継続し,二つの認知方略が注意機能(特に,定位)の下位成分に及ぼす影響を検証した。もう一つは,fMRIの測定結果に関して,関心領域(Region of Interest; ROI)等を用いた解析を行い,ノイズとなった要因を追及する新たなプロジェクトを派生させた。前者の研究において,定位機能(特に,解放成分)の効率が向上する傾向が示されたが,注意において被験者の意図が及ぶ範囲を明確に特定するに至らなかった。後者の研究において,Fan et al. (2007)を基にROIを設定し,様々な視点・手法を用いて解析を進めたが,想定していた領域において賦活を確認することができなかった。 以上のように,実験手続きや解析手法の修正を余儀なくされ,現在対策を講じている。一つの改善案として,これまで実施してきた各注意成分を同時に測定する実験パラダイム(Attention Network Test, ANT; Fan et al., 2002, ANT-R; Fan et al., 2009)ではなく,各注意成分を独立して測定することが可能なパラダイム(例えば,Theeuwes et al., 2004)を用いて測定することを現在検討している。
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